日本相撲協会は31日午前、東京・両国国技館で大相撲名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、関脇高安(本名・高安晃=27、田子ノ浦)の大関昇進を正式に決定。相撲協会からは春日野理事(55=元関脇栃乃和歌)と審判委員の片男波親方(45=元関脇玉春日)が伝達の使者に立ち、東京・千代田区の帝国ホテルで高安と師匠の田子ノ浦親方(40=元幕内隆の鶴)に大関昇進を伝えた。晴れて新大関となった高安は平成世代で初の横綱昇進を狙う。

「大関高安」が正式に誕生した。2005年春場所の初土俵から12年あまり。15歳で入門した当時は兄弟子による厳しいしごきに加えて相撲部屋の集団生活にもなじめず、何度も部屋からの脱走を繰り返した。転機となったのは入門2年目のころ。父・栄二さんが腎臓がんを患ったことが、相撲に真正面から向き合うきっかけとなった。

 高安は「病気になった父親が望んでいることは、相撲で大成すること。そういう状況(闘病生活)のなかで『頑張れ』と言われて身にしみた。結果を出して上(の番付)に上がって喜んでもらいたい気持ちが強くなった」。目の色を変えた高安は先代師匠(元横綱隆の里)の熱心な指導や兄弟子の横綱稀勢の里(30)らに胸を借りながら着実に成長。ついに大相撲の看板力士に上り詰めた。

 角界の世代交代を象徴する存在でもある。平成世代の出世争いで常にトップを走ってきた高安は新十両、新入幕、新三役で一番乗りを果たした。新大関こそ照ノ富士(25=伊勢ヶ浜)に先を越されたものの、日本出身力士としては初めてだ。次の目標は平成生まれで初の横綱昇進。そのためには、他の横綱大関を倒すだけでなく「平成世代最強」を証明する必要がある。

 実際、三役以下を見渡せば、小結御嶽海(24=出羽海)、幕内正代(25=時津風)、遠藤(26=追手風)、宇良(24=木瀬)らが台頭。今や平成生まれは幕内42人のうち19人と半数に迫る勢いだ。高安自身も「この年(27歳)になって、ウカウカしていられない。(同世代以下で)強い力士が増えている。自分も負けずに努力しないと」。危機感を募らせている。

 高安の、もう一つの原動力が「中卒叩き上げ」のプライドだ。同条件で入門した現役の日本出身幕内力士は、兄弟子の稀勢の里と幕内輝(22=高田川)ぐらい。それ以外は高卒や学生相撲出身者で占められている。高安は「15歳でこの世界に入っている。そのぶん、経験したこともたくさんある。高校とか大学で入ってきた相手には負けたくない」と言い切った。

 念願の初優勝と横綱昇進へ向けて、新大関の挑戦がここから始まる。

 ☆たかやす・あきら 本名同じ。1990年2月28日生まれ。茨城・土浦市出身、2005年春場所に鳴戸部屋から初土俵。11年名古屋場所で新入幕。13年秋場所で新小結となり、平成生まれ初の三役昇進を果たした。同年12月に部屋名称が田子ノ浦部屋に変更。16年秋場所新関脇。殊勲賞3回、敢闘賞4回、技能賞2回。得意は突き、押し、左四つ、寄り。186センチ、174キロ。