尻に火がついた!? 横綱白鵬(32=宮城野)が17日、東京・靖国神社の奉納相撲で春巡業に復帰した。3月の春場所は右足親指のケガなどで途中休場する一方で、横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が劇的な逆転優勝で2連覇を果たした。和製横綱ばかりが話題をさらっている現状に、大横綱は危機感を強めるばかり。賜杯奪回へ向けて、今まで以上に闘志を燃やしている。

 大勢のファンが見守る前で久しぶりに横綱土俵入りを披露した白鵬は「思ったより声援が多かった。(巡業の)途中からだけど、待っていてくれたんだな」と復帰を実感した様子。夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)へ向けても「春場所はホヤホヤの新横綱(稀勢の里)が逆転優勝して横綱の責任を果たしてくれた。今度は自分の番という気持ちにならないといけない」と再起へ意欲を見せた。

 横綱になってから5場所連続のV逸は過去最長。さらに、稀勢の里の活躍と一連のフィーバーを目の当たりにして、いつになく危機感を募らせているという。白鵬に近い関係者は「初場所、春場所と相撲の話題は稀勢の里ばかり。横綱(白鵬)のプライドが刺激されているのは、言葉の端々から感じる。(賜杯奪回に)かなり本気になっていることは間違いない」と胸中を代弁した。

 和製横綱の誕生が19年ぶりという事情があるにせよ、稀勢の里の優勝回数は2回。優勝37回を誇る大横綱の実績に比べれば、まだまだ足元にも及ばない。長年にわたって大相撲の中心に君臨してきた白鵬にとって、このまま“新参横綱”に主役の座を奪われ続けることは不本意以外の何物でもない。春場所後の横綱審議委員会の定例会合では「衰えたのでは」という声も上がっただけに、再び世間の目を自らに向かせるためには優勝するしかないのだ。

 白鵬は「ある人が『31回以上優勝した横綱は3人いるけど、40回以上の大台は誰もいない』と言っていた。それを聞いて体が熱くなった。大台の40回を平成の土俵で皆さんに見せられれば」。大横綱としての意地とプライドをかけて夏場所に臨むことになりそうだ。