大相撲春場所で2場所連続2回目の優勝を果たした横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が27日、大阪市内で会見し「忘れられない場所になった。一生の思い出になる」と15日間の激闘を振り返った。左肩から上腕部付近の負傷に耐えて奇跡の逆転Vを果たした和製横綱の奮闘には、同日開かれた横綱審議委員会でも絶賛の嵐。一方で、存在感が薄かった他の3横綱の評価は下落の一途をたどっている。横審の見方も「稀勢1強時代」へまっしぐらだ。

 稀勢の里が新横綱として臨んだ春場所は奇跡の逆転優勝で幕を閉じた。13日目の取組で左肩から上腕部付近にかけて大ケガを負い、誰もが休場を確信するなかで強行出場。千秋楽は左腕が使えない状態で、大関照ノ富士(25=伊勢ヶ浜)を相手に本割と決定戦を連勝して執念で賜杯をもぎとった。

 稀勢の里は「やると決めた以上は、絶対にあきらめないでやろうと思った」と強行出場後の心境を振り返る。そのうえで「(本来は)15日間万全の状態で務め上げるのが使命。ああいう見苦しいテーピングをする状況になった自分が一番悪い。今は反省ですよ。あそこでケガをして、ああいう相撲しか取れなかった」。劇的な優勝に浮かれることなく、自らの横綱としてのありようを冷静に見つめた。

 15日間を通じて、横綱として初めて本場所の土俵入りも経験した。「今までの土俵生活とは全く違う。一回一回、綱を締めた瞬間、何か体が清められるというか、洗われるというか。それは肌で感じました」と改めて地位の重みを実感した様子だった。

 この日に東京・両国国技館で開かれた横審の定例会合でも新横綱の奮闘が称賛された。北村正任委員長(75=毎日新聞名誉顧問)は「(委員の)皆が稀勢の里の頑張りに感激していた。今場所を見ると、横綱になる前と変わってきた。自覚が備わって、落ち着いて相撲を取れていた」と好印象を口にした。

 その一方で、他の3横綱の評価は大幅に下落。白鵬(32=宮城野)は右足親指のケガで途中休場し、日馬富士(32=伊勢ヶ浜)、鶴竜(31=井筒)も、早々と優勝戦線から脱落した。北村委員長は「最後まで優勝争いに残ったのは大関の照ノ富士。他の横綱に奮起してもらわないと。(白鵬は)ちょっとケガが多すぎる。『衰えたのでは』と言う人もいる」とまで言い、最強横綱にも苦言を呈した。

 同委員長は白鵬に関して「まだまだ、キチッと体調を整えて出れば成績を挙げられる。頑張ってほしい」とフォローも付け加えていたが…。稀勢の里と差がさらに広がったことは明白だ。

 今回の稀勢の里の優勝で次の夏場所(5月14日初日、両国国技館)の新番付では、東の正横綱となることが確定。ついに名実ともに角界の頂点に立つことになる。ここで3連覇を達成すれば、いよいよ横審内でも「稀勢1強時代」の印象が色濃くなることは間違いなさそうだ。