大相撲春場所千秋楽(27日、大阪府立体育会館)、横綱白鵬(31=宮城野)が横綱日馬富士(31=伊勢ヶ浜)を突き落としで下し、4場所ぶり36回目の優勝を果たした。表彰式のインタビューでは感極まって涙を見せる場面も。一方で、今場所はこれまでにも問題視されてきたダメ押しで重傷者を出すなど後味の悪さも残した。今後も改善が見られなければ「出場停止」などの厳罰を求める声が親方衆からは上がっている。

 優勝を決めた、日馬富士との結びの一番。白鵬は立ち合いで相手の視界をさえぎるように右手をかざすと、突っ込んでくる日馬富士を左へかわしながら突き落とした。“注文相撲”によるあっけない決着に超満員の観客からはブーイング。表彰式のインタビューでは白鵬が感極まって涙をこらえる場面もあったが、一部の観客からは「勝ったら何でもええんか!」などと厳しいヤジが飛んだ。

 白鵬自身も館内の微妙なムードを察知したのか「ああいう変化で決まるとは思わなかったので、申し訳ない」とファンに向けて異例の謝罪を行う一幕があった。それでも支度部屋に戻ると「稀勢の里関も(9日目の琴奨菊戦で)変化で勝った。これで文句は言えないでしょう」と本音もチラリ。今場所に限れば、横綱の言い分にも一理があることは確かだ。

 ただ15日間を通じて見ると、やはり今回の優勝に後味の悪さは残る。4日目に完全に土俵を割った隠岐の海(30=八角)にダメ押し。8日目には嘉風(34=尾車)を寄り切った直後に土俵下まで投げ飛ばした。この時に審判長を務めていた井筒親方(54=元関脇逆鉾)が下敷きになり、救急車で病院送りに。左太もも付け根付近の骨折で全治3か月の大ケガを負わせた。

 翌9日目の打ち出し後、審判部長の伊勢ヶ浜親方(55=元横綱旭富士)が白鵬を審判部まで呼んで口頭で注意。これまでにも白鵬のダメ押しはたびたび問題視され、そのたびに伊勢ヶ浜親方は師匠の宮城野親方(58=元幕内竹葉山)を通した注意のみで済ませてきた。この“弱腰対応”に審判部内でも不満が噴出。重傷者が出る事態となって、ようやく重い腰を上げたわけだが、対応が後手に回った印象は否めない。

 審判部の親方の一人は「今まで師匠に注意しても直らなかった。(本人への直接注意は)遅いぐらい」。別の親方からは「また(ダメ押しを)やるに決まっている。今度は出場停止ぐらいのことをしないとダメだ」とさらに重い“厳罰”を求める声も上がっている。白鵬は井筒親方の負傷について「申し訳ない」と謝罪の言葉を口にしているが、審判部をはじめ親方衆からの風当たりはむしろ強まるばかりだ。

 前人未到のV36を達成しても解消されない最強横綱の「品格問題」。こうした周囲の反応を白鵬自身は、どう受け止めるのか――。