「令和のウルフ」襲名だ。大相撲春場所千秋楽(27日、大阪府立体育会館)、新関脇若隆景(27=荒汐)が幕内高安(32=田子ノ浦)との優勝決定戦を制し、初Vを果たした。新関脇の優勝は1936年夏場所の双葉山以来、86年ぶり。1場所15日制以降では初の快挙となった。幕下若隆元(30)、幕内若元春(28)を兄に持つ3兄弟力士としても注目を集める中、末っ子が大躍進。地元・福島の後援会幹部は若隆景の素顔を明かすとともに、大横綱の〝後継者〟として期待を寄せている。

 ともに本割で敗れて迎えた優勝決定戦。若隆景は高安に土俵際まで攻め込まれたが、最後は上手出し投げで逆転勝ち。福島県出身では3人目の優勝を果たした。表彰式のインタビューでは「うれしいです。(賜杯は)重たかった。(会場に駆けつけた)家族にはいつも支えてもらっているので、いいところを見せられたと思う」と喜びをかみしめた。

 祖父は元小結若葉山、父は元幕下芳信夫の相撲一家に育ち、長男の若隆元、次男の若元春を兄に持つ末っ子。3兄弟を少年時代から見守ってきた「大波三兄弟福島後援会」の作田謙太郎幹事長によると、当初は才能を見込まれていたのは次男だったという。「(若元春は)一番素質があると言われて、大相撲に入る時は部屋からの勧誘も多かった。若隆景は体が細かった。角界入りも、ずいぶん迷っていた」と振り返る。

 その次男とは性格も対照的だ。「若元春は気さくな方だから、今も国技館のお茶屋さんや売店の方にも人気がある。(若隆景は)コロナ禍の前も飲みに行ったり、タニマチさんと付き合いもあまりなかった。『優勝します』なんて軽いことは、僕らに対しても言わない。武骨さは昔かたぎの力士という雰囲気」(作田氏)

 ただ、決して寡黙なだけの男ではない。作田氏は「部屋の打ち上げでは東京などからの参加者が多い中、私が一人でいたりすると、ずっと話し相手になってくれたりする子。冗談を言ったりはないけどね。そんな優しい面がある。周りに細かい気遣いができる人だよ」と横顔を明かした。

 身長181センチ、体重130キロと力士としては〝軽量級〟。その体形から、地元では昭和の大横綱で「ウルフ」の愛称で人気を博した千代の富士に姿を重ねる声も上がっている。「まわしの色(青)も同じだし、体が小さくてもあそこまでやれるんだというのを見せてほしいと、みんな言っていた。『令和のウルフ』になってほしいね」(作田氏)と期待は高い。

 新関脇の場所で12勝(3敗)と結果を残し、3度目の技能賞も獲得。大関取りの起点をつくった27歳は「来場所からが大事。頑張ります」と早くも次なる挑戦へ視線を向けた。