涙の理由は――。大相撲初場所千秋楽(23日、東京・両国国技館)、関脇御嶽海(29=出羽海)が横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)を寄り切り、2019年秋場所以来となる3度目の賜杯を抱いた。

 過去4勝12敗、直近7連敗の天敵を撃破しての優勝に、表彰式では「(天皇賜杯は)自分には重たい」と語ったが、その後のリモート取材で「(賜杯の)重みというのは毎回、どっしり来る」とかみ締めた。この日の取組前には「プレッシャーはなかったけど優勝、番付が上がるとかいろいろ考えた。いつも以上に気合を入れないとと思ってやった」と振り返った。

 優勝インタビューでは大関昇進が確実になったことを伝え聞くと、涙ぐむ場面も。御嶽海は「(場所前に)伊勢ヶ浜審判部長(元横綱旭富士)が(昇進の条件は)全勝優勝と言っていたんで、厳しいかなと思っていた。『昇進』という言葉が聞けるとは思っていなかったんで、こんなにうれしいものなのかと思った」と理由を説明した。

 場所中は常に表情を崩さず、緊張感を漂わせていた。昇進についても終始、口を閉ざしてきたが「ひそかに狙っていた方が、かっこいいかなと」。大きな重圧から解き放たれ、本来の温和な表情に戻っていた。