大相撲春場所千秋楽(22日、大阪府立体育会館)、横綱白鵬(30=宮城野)が横綱日馬富士(30=伊勢ヶ浜)を寄り切って14勝目。新関脇の照ノ富士(23=伊勢ヶ浜)と1差を守り、34回目の優勝と自身2度目の6連覇を決めた。表彰式の優勝力士インタビューには応じたものの、支度部屋では報道陣には無言を貫いた。審判批判騒動の一件以来、心を閉ざしたまま。最強横綱と周囲との「溝」は“身内”にまで及んでいる。


 前人未到の34回目の優勝を果たした白鵬は表彰式のNHKアナウンサーによる優勝力士インタビューで「初場所で新記録(優勝33回)を達成して、それにふさわしい優勝だったと思います」と胸を張った。ただ口調は淡々としており、表情もどこか硬い。「どんな気持ちで春場所に臨んだ?」と問われると、顔をこわばらせて「いろいろと騒がせましたけど…」と話した後、約25秒間も沈黙。「まあ、頑張ります」と言葉に詰まる場面もあった。


 支度部屋に戻ると、これまで通り報道陣に背中を向けて“取材拒否”。最後まで無言のまま優勝パレードのオープンカーに乗り込んだ。初場所の優勝一夜明け会見で審判批判を展開。師匠の宮城野親方(57=元幕内竹葉山)が審判部から厳重注意を受けるなど騒動に発展した。その後の白鵬は公の場で口を開くことがほとんどなくなった。今場所中も報道陣に向けて発したのは「下がれ!」「どけよ!!」などと威圧的な言葉だけだった。


 白鵬と周囲との「溝」は、本来は“身内”であるはずの後援者らにまで生じている。審判批判騒動が広がりを見せた時期のことだ。白鵬が騒動について謝罪や説明をしない態度を貫くなか、見かねた有力後援会の関係者が「ちゃんとした形で謝罪すべきでは」と苦言を呈したことがあった。もちろん、横綱のイメージ悪化を懸念してのことだ。


 ところが、その後に白鵬サイドは予想外の行動に出たという。白鵬の側近が後援会に対して「今後は横綱を(後援会主催の激励会などに)行かせない!」と絶縁をチラつかせて“恫喝”したというのだ。これまで全面的に白鵬をバックアップしてきた後援会に、大きな失望感が広がったことは言うまでもない。


 側近による「脅し」ともとれるような対応に、白鵬本人の意思がどこまで反映されているのかは定かではない。ただ、白鵬が不機嫌な態度を見せれば、その周辺が過剰なまでに気を使い、結果的に状況がさらに悪化する…。いわば横綱を中心にして「負の連鎖」が起きていることだけは確かなようだ。


 いずれにせよ、ここまで白鵬が“腫れ物扱い”されるのは、大鵬の優勝32回を超える「スーパー大横綱」となったことと無関係ではないだろう。14日目(21日)の大関稀勢の里(28=田子ノ浦)戦では立ち合いで変化し、ついにファンからもブーイングを浴びた。前人未到の記録を塗り変え続ける孤高の横綱は、これからどこへ向かうのか。