師弟関係崩壊――。日本相撲協会は外出禁止期間中のキャバクラ通いが発覚した大関朝乃山(27=高砂)に対して「6場所出場停止」と「6か月の報酬減額50%」の懲戒処分を下した。処分が明けるまでに、番付は三段目まで陥落する見通しとなった。さらに、先代師匠の錦島親方(65=元大関朝潮)も同様の規則違反をしていたことから、相撲協会を退職したが、角界関係者もあきれる〝師匠失格〟ぶりの実態が明らかに。しかも結果的に処分を免れたため「高砂問題」は今後に禍根も残しそうだ。


 相撲協会は11日の臨時理事会で、朝乃山による新型コロナウイルス対策のガイドライン違反について協議し「6場所出場停止」などの懲戒処分を決定。本人から提出されていた引退届は八角理事長(57=元横綱北勝海)の預かりとし、再び協会に迷惑をかけた場合には受理することも決めた。

 朝乃山は今年1月から5月の夏場所前にかけての外出禁止期間中に計10回のキャバクラ通いを繰り返していた。週刊誌報道で問題が発覚した当初は、協会の事情聴取に対して潔白を主張。問い詰められて答えに窮すると、一転して事実を認めた。

 コンプライアンス部長の尾車親方(64=元大関琴風)は「大関の地位であることと、虚偽の報告をした。どちらかと言うと、ウソをついたほうが大きい。素直に認めていれば、ここまでのことはなかった」と厳罰の理由を説明した。

 師匠の高砂親方(39=元関脇朝赤龍)も監督責任から「3か月の報酬減額20%」が科された一方で、結果的に「処分なし」に終わったのが先代師匠の錦島親方だ。同親方は少なくとも昨年7月から外出が禁止されている場所前や場所中に後援者らと外食を繰り返し、朝乃山や付け人を同席させていた。相撲協会の発表では「週に2~3回くらいの頻度」だったという。

 錦島親方が部屋の師匠を退いたのは昨年11月。つまり、まだ師匠だった時期から自ら率先して規則を破っていたことになる。しかも、そこに「罪の意識」などはまるでなかったようだ。角界関係者は「朝乃山のキャバクラ通いが発覚した時に、錦島親方は『そんなこたぁ、大したことねえだろ!』と言い放ったそうだ」とあきれたように証言する。

 尾車親方も、錦島親方から事情聴取を行った際の様子について「(事の重大さを)あまり最初は分かっていなかった。(自身の規則違反を)隠すこともなく、サラサラサラとお話しされていた」と明かした。錦島親方は朝乃山が謹慎休場した夏場所中に一部メディアで「何であんな行動をしたのか理解しがたい」「裏切られた思い」などと語っていたが、バレなければいいという考えだったのか…。

 相撲協会は結局、錦島親方が10日付で提出した退職願を受理。臨時理事会が開かれた11日の時点で協会員ではなくなったため、事実上の〝おとがめなし〟となった。朝乃山の引退届を受理しなかったのとは対照的な不可解な対応に、一部の親方衆からは「誰が一番悪いかと言えば、先代の師匠(錦島親方)。退職願を受理せずに解雇すべきだった。協会は甘い」と強い不満の声も上がっている。

 現役時代は人気大関として活躍したが、先々代から引き継いだ高砂部屋では元横綱朝青龍が数々の不祥事を繰り返し、朝乃山も大きな過ちを犯した。そして最後に自ら規則を破って角界を去ることになったダメっぷり。そんな錦島親方に対して、協会のコンプライアンス委員会は「指導者としての資質が欠けているといっても過言ではない」と断罪。〝弟子を見れば師匠が見える〟ということか…。