日本相撲協会は30日午前、愛知県体育館で大相撲秋場所(9月14日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議と理事会を開き、関脇豪栄道(本名沢井豪太郎=28、境川)の大関昇進を正式に決定。相撲協会からは出来山理事(63=元関脇出羽の花)と大鳴戸審判委員(40=元大関出島)が伝達の使者に立ち、愛知・扶桑町の境川部屋宿舎で豪栄道と師匠の境川親方(52=元小結両国)に大関昇進を伝えた。晴れて念願の大関となった豪栄道の行く末には「横綱」の2文字も見えてきた。

「大関豪栄道」が正式に誕生した。これで名実ともに相撲協会の看板力士になると同時に、今後は「横綱候補」としての視線を向けられることになる。豪栄道自身も「やるからには上(横綱)を目指してやっていきたい」と強い意欲を口にした。 大関取りの目安とされる「3場所合計33勝以上」に満たない成績(32勝)で昇進したことには、今後に不安がつきまとう。

 その一方で、角界内では豪栄道の潜在能力を高く評価する見方もある。陸奥親方(55=元大関霧島)は本紙に「引いてしまう相撲さえなくなれば、もともと大関になるだけの力はあると思っていた。白鵬を倒すんだから。2場所連続で勝つのは、まぐれではできない」。名古屋場所では“悪癖”のはたきやいなしが大幅に減少。横綱白鵬(29=宮城野)に真っ向勝負を挑み、最後はあびせ倒した一番は圧巻だった。

 さらに、同親方は「今場所のような相撲を続けていければ大関どころじゃない。もう一つ上(横綱)だって十分に狙える」と言い切った。

 こうした期待感は稀勢の里(28=田子ノ浦)と琴奨菊(30=佐渡ヶ嶽)の両大関に対する失望感の“裏返し”でもある。北の湖理事長(61=元横綱)は現大関陣に「横綱を目指すなら、まず安定感が必要。11、12番勝っても(翌場所で)2桁を割ったら何の意味もない」と苦言を呈した。

 稀勢の里は夏場所で13勝を挙げながら、今場所は9勝どまり。琴奨菊は今場所12勝で最後まで優勝を争ったが、先場所は5勝10敗の大負け…。和製横綱が誕生しない状況が続けば、新しい力に希望を見いだすのも致し方ないところだ。

 実際、審判部長の伊勢ヶ浜親方(54=元横綱旭富士)は豪栄道を大関に昇進させる理由について「これから先、まだまだ強くなれる期待もある」と今後の“伸びしろ”を挙げている。

 今回の名古屋場所に限って見れば、3人の中では最も勢いに乗っていたことは確か。一時の勢いなのか、能力が開花したのか。新大関として迎える秋場所で真価が問われる。