まさかの展開だ。大相撲名古屋場所4日目(11日、愛知県体育館)、横綱白鵬(33=宮城野)が休場する事態となった。2日目(9日)の取組前の支度部屋で足を滑らせて右ヒザを痛め、この日の朝になって患部の症状が悪化したという。取組中の負傷や病気でもない“前代未聞”の理由でリタイアを余儀なくされた。今年だけで大横綱は早くも3度目の休場。自ら目標に掲げる2020年までの現役続行へ向けても暗雲が漂ってきた。

 突然の休場だった。力士が休場する場合は午前11時までに審判部へ届け出るのが通例。白鵬は午後2時ごろになって休場を届け出ると「右膝蓋腱損傷、右脛骨結節剥離骨折の疑いにて、2週間の安静を要する」との診断書を提出した。すでに翌日5日目の取組が決まっていたため、審判部では取組を差し替える「割り返し」が行われることになった。

 横綱土俵入りでは館内で「白鵬休場。土俵入りはありません」とアナウンスされると観客から一斉に「エーッ!」と驚きの声が上がり、騒然とした雰囲気となった。師匠の宮城野親方(60=元幕内竹葉山)によると、白鵬が負傷したのは2日目の取組前。支度部屋の床に目張りしてあったビニールテープで足を滑らせ、右足で踏ん張った際にヒザを痛めたという。

 それでも土俵では3日目まで3連勝と負傷の影響を感じさせなかったが、この日の朝に患部の症状が悪化。痛み止めの注射を打ち、アイシングを施すなどしてギリギリまで出場を模索したものの、痛みが引かなかったため最終的に休場を決断した。

 宮城野親方は「(足を滑らせて)こらえたときにギクッとなったみたい。本人は痛みが引けば出るつもりだった。(患部は)相当、腫れている」と説明した。白鵬は「せっかく、いい相撲を取っていたのに。昨日(10日)のうちに痛み止めを打っておけばよかった」と落胆していたという。

 それにしても驚きなのが休場に至る経緯だ。稽古場や本場所の土俵で負傷することは珍しくないが、横綱が支度部屋で足を滑らせて休場するのは“前代未聞”の珍事だ。

 一方、今年に入って白鵬の休場は早くも3度目。3月には33歳となった。今場所で8場所連続休場となった横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)とは異なり、白鵬の場合はただちに進退が問われる立場ではない。ただ、横綱として初めて休場した2015年と16年は休場が1回ずつだったのに対して、昨年は2回、そして今年は3回と“ペースダウン”は明らか。宮城野親方は「年齢的なものもある。だから(本場所中の)稽古も2、3日に1回は休むようにしていた」と話したが…。

 20年までの現役続行を目指す大横綱は、ここから復活した姿を見せられるのか。