今度こそ、復活した姿を見せられるのか。大相撲名古屋場所(7月8日初日、愛知県体育館)を控えた26日、横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が名古屋市西区の部屋宿舎で稽古を再開した。ここまで7場所連続休場中と苦境から抜け出せず、この日も今場所の出場に関しては明言を避けた。「引退」の2文字もチラつく中、和製横綱は乗り越えなければならない課題に直面している。

 この日から稽古を再開した稀勢の里は四股やすり足などの基礎運動のほか、部屋の若い衆に胸を出して感触を確かめた。稽古後には名古屋市内で開かれた力士会に参加。「昨年(の名古屋場所)は途中休場であまりいい相撲を見せられていないので“今年こそ”という気持ち」と意気込みを口にする一方で、出場に関しては「しっかり稽古をやるだけです。今は…」と明言を避けた。

 5月の夏場所は左胸のケガで全休。年6場所制となった1958年以降、横綱では貴乃花と並んで最長となる7場所連続休場となった。その稀勢の里は今月中旬には部屋の徳島合宿に参加し、約1か月ぶりに大関高安(28)と相撲を取った。

 ただ、同部屋の弟弟子との稽古だけでは復活の度合いを測る“物差し”にはならない。昨年3月場所で左胸などを負傷して以降、本場所で対戦する力士との実戦的な稽古では格下の相手にすら苦戦する傾向が続いているからだ。その意味では29、30日に行われる二所ノ関一門の連合稽古が出場の可否を判断する一つの試金石となる。今場所の出場を本気で目指すのなら、その後も本番直前まで出稽古を重ねて相撲勘を取り戻す必要がある。

「環境の変化」も本場所に影響を及ぼす可能性がある要素の一つ。田子ノ浦部屋は昨年まで先代師匠(元横綱隆の里)の時代から続く長久手市に宿舎を構えていたが、今年から名古屋市内に移転した。本場所会場の愛知県体育館までの距離が約20キロから5キロほどに短縮されて移動の負担が減る半面、長年にわたって慣れ親しんできた過ごし方の変更を余儀なくされる。

 実際、現在の田子ノ浦部屋が千葉・松戸市から東京・墨田区に一時移転した直後の2014年1月場所で、稀勢の里は7勝8敗と大関に昇進してから初の負け越しを経験している。今回の移転について和製横綱は「(自室は)広い部屋だし、申し分のない環境。(会場からは)目と鼻の先ですし。あとはしっかり結果を出すのみ」と前向きに受け止めているが、プラスに作用するかどうかは分からない。

 いずれにせよ、稀勢の里にとっては今場所で復活できるか否かが土俵人生の大きな分岐点となる。本場所までの動向に注目が集まることになりそうだ。