大争奪戦が始まる――。ラグビーW杯で初のベスト8と結果を出した日本代表ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC=49)には日本をはじめ、各代表や強豪クラブからオファーが届くなど獲得競争が過熱し、今後の動向が注目されている。その一方、W杯期間中に約20万枚を売り上げた日本代表ジャージーの“利権”を巡って大手メーカーの参戦が確実視されており、新たなバトルが勃発しそうだ。

 いよいよ終盤戦、準決勝(26、27日)を迎えるW杯は、初のベスト8となった日本代表の快進撃もあって大盛況。スタジアムは多くの観客で埋まり、NHKで放送された準々決勝の日本―南アフリカの平均視聴率は41・6%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)をマークするなど、W杯特需が続いている。

 そんな中、恩恵を受けたのが日本代表にジャージーを提供する「株式会社カンタベリーオブニュージーランドジャパン」だ。プロモーション担当者は「4年前には南アフリカ戦に勝利した後に完売した。今大会は前回の20倍の量を準備しました」。1万800円(税別)のW杯モデルをはじめレプリカなど各種モデルを含めた約20万枚がほぼ完売で、売り上げは約30億円とみられる。

 同社は日本に加えてイングランド、アイルランドなど各代表チームとも契約し、公式ジャージーを販売。こちらも売れ行きは好調とあって「本当にありがたいこと」(同関係者)とうれしい悲鳴を上げているが、喜んではいられない。一般的にW杯後は契約の更新や見直しの時期とあって大手メーカーの参戦が見込まれているからだ。

 関係者らによると、国内ラグビーで“プロリーグ構想”が進行し、さらなる競技人口とファン拡大が見込めるため各メーカーが「ビジネスチャンス」と捉えているという。中でもニュージーランド代表を支援する大手のアディダス社やアルゼンチン代表と契約するナイキ社などが日本代表に照準を合わせている。

 これまでサッカー日本代表でもユニホームを巡って“大手”がシ烈な獲得競争を繰り広げてきた。2002年日韓W杯前にはアディダス対ナイキ、14年のブラジルW杯後にもアディダス対プーマが白熱のバトルを展開した。国内メーカー関係者はかねて「大手に資金面で対抗できない」とお手上げ状態だったという。

 それだけに人気スポーツになりつつある日本ラグビーも“世界メジャー”が席巻するとみられている。別のカンタベリー関係者は「周囲を取り巻く環境が大きく変わってくるかもしれない」とした上で「1997年から20年以上にわたってサポートをさせてもらっている。これまでのパイプを自信に、今後もラグビー界に恩返しをさせてもらえたら…」と話した。

 国民を大熱狂させた日本ラグビーは、ピッチ内外で大変革の時を迎えつつあるようだ。