〝羽生フィーバー〟が教育界にも波及している。フィギュアスケート男子でソチ&平昌五輪金メダルの羽生結弦(27=ANA)が今年春に出版された高校の英語の教科書に登場。なんと14ページにわたって大特集されている。まるで写真集のような仕上がりで、高校生のみならず羽生ファンの大人たちが教科書を買い求める事態に…。本紙は異例の教材を企画した出版社を直撃した。

 羽生は27日に開幕したアイスショー「ファンタジー・オン・アイス」(千葉・幕張イベントホール)に出演。進退が注目される中、北京五輪以来約3か月ぶりとなる氷上の舞いにファンは熱狂し、改めて人気の高さをうかがわせた。

 そんな中、教科書業界で〝異変〟が起きている。今年春に新たに出版された第一学習社の高校英語の教科書「Vivid」では14ページにわたって羽生の特集が組まれたのだ。これまで羽生を起用した教科書は数多く存在したが、その大半は道徳や社会の教材で、羽生の地元・仙台を襲った東日本大震災に関連する内容。しかし、今回は英語の教科書に起用され、羽生が登場する「レッスン3」には幼少期や過去の大会の写真が何枚も掲載されている。

 具体的な学びの目的は「羽生選手のスケート人生について理解し、その内容を整理して伝えることができる」「整理した内容を活用して、けがをしたときの羽生選手の気持ちを想像して表現することができる」といったもの。羽生の足跡をたどりながら英語も学べる内容となっており、4月の新学期以降に〝羽生特集〟の存在を知ったファンはSNSで騒然となった。

 多くの人は高校生の息子や娘が持ち帰った教科書で気付き、あるファンはツイッターで「お子さんの英語の教科書をチェックしてください。すごい教科書が出版されました」とツイート。瞬く間に拡散され「これなら英語が大好きになる」「高校生がうらやましすぎる!」とお祭り状態となった。その後、教科書のタイトルや品番などがSNSで共有され、まるで写真集のように予約が相次ぎ、買い求める人が多数出現したという。

 いったい、どのような狙いで今回の教材が企画されたのか。出版元の第一学習社は本紙の取材に「多くのファンに愛されている人気スポーツ選手であり、生徒にとってもなじみのある人物を扱うことで、より興味・関心を持って英語学習に取り組んでもらうことができると考えた」と回答。羽生を採用した理由は、フィギュアスケーターとして残した輝かしい実績だけでない。「度重なる故障との闘いや、東日本大震災被災と復興支援など、さまざまな苦難や努力があり、深みのある題材になると期待した」と説明した。

 同社は過去にも英語の教科書で著名人を取り上げているが「これほどファンの方から反響をいただくのは初めてで驚いている。高校生に少しでも楽しんで英語を学んでもらいたいという思いで編集したので『この教科書なら英語が好きになれたかも』『この教科書で勉強したかった』といった声は非常にうれしい」と喜んでいる。

 競技の枠を超えて、教育の分野にまで影響を及ぼしている羽生。その存在の大きさを改めて証明した格好だ。