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“育成の星”ソフトバンク・千賀を発掘した幻の名スカウト


強烈なライナーをグラブではじく千賀

 ソフトバンクの千賀滉大投手(24)が18日のロッテ戦(ZOZOマリン)に先発。8回3失点(自責1)で2勝目を挙げ、チームの連敗を4で止めた。今春のWBCで一気に名を上げた右腕だが、高校時代は無名の存在で、指名は育成ドラフト4巡目だった。プロ入りには「名古屋市のスポーツ用品店の店主」の推薦があったから――とのエピソードがあるが…。“幻の名スカウト”の発掘ストーリーを追跡した。

 

 先発した千賀は8回を投げて2試合連続の2桁となる11奪三振をマークした。初回に2点を失ったが、最速154キロの直球と自慢の「お化けフォーク」を武器にロッテ打線をねじ伏せた。

 

 今季はWBCでのブレークで世界的に大きな注目を集めた。準決勝の米国戦では敗戦投手になったものの、2回を投げて4者連続を含む5奪三振の快投。防御率0・82とインパクト抜群の投球で大会の優秀選手に選ばれた。今季は昨季12勝からの飛躍を期すシーズンとなっている。

 

 入団は2010年の育成ドラフト4巡目。高校時代は無名の存在だった。それが育成とはいえ、プロ入りできたのはなぜなのか。地元・愛知にあるスポーツ用品店の店主の推薦があったから――との話は知られつつあるが、その発掘秘話はこのようなものだった。

 

 もともと中学生のシニアの監督をやっていた経験もあり、地域のアマ事情に精通した存在だったというスポーツ用品店の店主の西川正二さん(故人)。現在、家業のスポーツ店を継いでいる息子の史時さんは「うちの店自体も野球に特化してまして。いろいろなつながりもあって『千賀がすごいぞ』という話が耳に入ってきたんだと思います」と話す。

 

 当時の千賀の評価は低かった。というよりも、全く知られてもいなかった。蒲郡高校自体が県立で、野球が強い学校というわけでもない。噂を聞いて興味を持った正二さんが、投球を見たことのある人物に話を聞いてみても「球はそこそこ速いがどこ行くか分からんよ」との寸評だったという。しかし、実際に足を運んで見に行ったところ「こんな選手はおらん」とゾッコンになった。

 

「千賀君を見に行った日に、えらく喜んで帰ってきたのを覚えています。知人の方にも『こんなヒジの使い方をできるやつはおらん。億を稼ぐプレーヤーになるぞ』と話していたそうです。本人(父)も野球をやっていて投手だったんです。父の知人に聞くところによると、肩とかヒジの使い方を見るのがうまかったみたいで。見る目があったそうです」(史時さん)

 

 こんな素材を埋もれさせるのはもったいない――。直接の面識などないにもかかわらず、正二さんは「何とかしたい」との思いを募らせた。懸命に知り合いだったスカウト関係者などに“ダイヤの原石”の存在を知らせていたという。

 

 ただ、その熱い思いとは裏腹に、球場に出向いたプロの目では「厳しい」との見立てが一般的だったようだ。

 

 最初に話を聞いて千賀を見に行った楽天、次にロッテは「育成契約でも厳しい」との結論だったという。

 

 そんな中で育成で指名することを決断したのがソフトバンクだった。

 

 晴れて千賀は10年10月28日に育成4巡目でプロの門を叩いた。ただ、その才能を見いだした“名スカウト”は、ドラフト直前ともいえる同年10月16日に亡くなった。ソフトバンクが育成で指名する方針であることは聞いていたようだが、潜在能力にほれ込んだ右腕のプロ入りの瞬間は見届けられなかったのだ。

 

 ただ、千賀のWBCでの活躍により、史時さんのもとには「置き土産の選手が活躍してよかったな」などと多くの連絡が来たという。

 

「千賀君の努力がすべてだと思います。ただ、父も喜んでいると思います。生きていたら『オレの目に狂いはなかっただろ』と喜んでるでしょうね。私たちにとっては、千賀君の活躍のおかげで、そうやって連絡をいただけたりすることだけでうれしいです」(史時さん)

 

 チームの連敗を4で止める白星に「前回同様、立ち上がりが悪くて焦りました。野手の方が打ってくれて助かりました」と笑みを浮かべた千賀。才能にほれた“名スカウト”の目と熱意により誕生した右腕は、まだまだ成長の伸びシロを秘めている。

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