まさかの〝爆上がり〟だ。東京五輪後に開催されたパラリンピックは5日に閉幕した。開閉会式は「五輪を超えた」と好評を博したが、大会公式マスコットの「ミライトワ」と「ソメイティ」の商品価値もうなぎ上りだ。コロナ禍では存在自体を揶揄(やゆ)する辛辣なパロディー画像が出回り、大会前はグッズが全く売れない散々な状況だったが、そこから奇跡の急上昇。来年からは〝貴族入り〟の栄転も果たすそうで…。

 五輪マスコットのミライトワは「未来」と「永遠(とわ)」、パラリンピックのソメイティは桜を代表する「ソメイヨシノ」と「so mighty(非常に力強い)」の意味が込められ、デザインは全国の小学生の投票で決定。だが、当初から評判は芳しくなく、五輪が近づいても知名度は一向に上がらなかった。

 コロナ禍で延期決定直前の昨年3月にはミライトワがソファに座り、ソメイティに「次の仕事を探したほうがいい?」と問いかける風刺画像が米国内で出回った。著作権を持つ大会組織委員会は大きな風評被害を受け、公式マスコットの存在感はドン底まで落ちた。さらに今年に入って五輪中止の世論が強まると、もはやミライトワとソメイティは話題にすら上がらず…。グッズ売り場は閑古鳥が鳴き、都内の店舗で働く女性店員は「売れ行きは悪いです。ここ数日で入れた商品は一つもありません」と本紙の取材に肩を落としていた。

 なんとか東京五輪は開幕したものの、最大の見せ場である開閉会式では姿を見せなかった。このまま寂しく姿を消すかと思われたが…東京パラリンピック開幕でガラッと流れが変わった。タレントのはるな愛、ギタリストの布袋寅泰らが登場した開会式は予想を上回る盛り上がりを見せ、組織委関係者は「多様性と調和のメッセージが五輪よりストレートに伝わった」と満足げだった。

 本紙でも報じたように、世論の変化とともにミライトワ、ソメイティの待望論が続出。満を持して閉会式で登場すると「主役キター!」「初めて動く姿を見た」「もう…ずっと忘れない」とネット上は歓喜に沸いた。「名前すら知らない」という低人気から奇跡の復活を見せたのだ。

 今では「今後もスポーツ大会に出てほしい」「永遠に存在し続けてほしい」「絵文字とかできないかな」などと大人気だが、今後の活動はどうなるか。組織委は「年内は組織委員会をはじめ各ステークホルダーからの依頼に応じて活動します」というが、22年1月からは国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)に権利が移転する。

「来年以降、マスコットの使用に際してはIOC、IPCの承諾が必要となります。レガシーについてはまだ決定している事項はございません。何を残すかを東京都などと含めて協議中です」(組織委)

 ドン底を見たマスコットが一転、〝株価ストップ高〟の状態で「IOC貴族」に仲間入りするようだ。一時は就職先を探していたはずのミライトワとソメイティ。あの暗黒期を考えると、まさに〝栄転〟と言える。