騒動のキーパーソンが痛烈な緊急提言だ。「女性が多い理事会は時間がかかる」という女性蔑視発言で世界中から批判を浴びる東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)に対し、日本オリンピック委員会(JOC)理事で柔道元世界女王の山口香氏(56)が一刀両断。森会長の脳裏に浮かぶ「話の長い女」の一人として、かねての天敵だった〝女三四郎〟が忖度なしの批判を展開しつつ、会長辞任勧告を突き付けた。


 ――森会長の会見はご覧になりましたか

 山口氏(以下山口) 全部は見てないのですが、一つ言えるのは、私は話は長くないわよ(笑い)。ただ、意見はちゃんと言う。疑問に思ったことをストレートに発言し、とことん議論するのが理事会ですから。でも、そういうスタイルが嫌いな人もいるでしょ。シャンシャンでおしまいにするのが好きな人。そういう方が雑談で「女は面倒くさいなあ」と言ったのが伝言ゲームのように森会長の耳にインプットされたのでは? あくまで想像ですけどね。ただ、女性理事を40%に増やす方針に反対意見は一切なかった。それは誤解しないでいただきたい。

 ――森会長の居直った態度をどう思ったか

 山口 一応、発言を撤回、謝罪していましたが、心から謝ってはいないですよね。というか、もともと何が悪かったかを理解していないと思います。これって自分の生きざまや成功体験と結びついている気がするんです。自分はこうやって生きてきて、こういう考えでやってきたから「今」がある。そんな確固たるポリシーがあるから新しい考えを受け入れられない。だから謝れないんですよ。謝罪したら過去の自分を否定したことになるので。

 ――ずばり、森会長は辞任すべきだと思うか

 山口 そうですね、私は会長は自ら退くべきだと思います。選手が限界を感じて引退するように。過去にも失言はあったとはいえ、最近の発言は若かった時の間合いや勝負感とはズレていて、笑いをとったつもりがこんなことに。選手もトップを維持するには心・技・体の充実が必要。思いだけでは重責は担えませんから。

 ――森会長は自分から身を引かれますか

 山口 まあ、難しいでしょうね。正直、スポーツ界や政界で引導を渡せる人はいないし、言うことも聞かないと思います。奥さまやお嬢さま、お孫さんから怒られたとの報道も見ましたので、ご家族が「お父さん、もう十分頑張ったんだから少しゆっくりしたら?」「孫の成長を見守るように、若い人に任せてみたら?」と話していただけたら、心がすうっと落ち着かれる気がしますね。

 ――そうなればいいが

 山口 今、森会長は五輪と一心同体ですよね。五輪に対して熱いお気持ちがあるのは分かりますが、一心同体になっているから五輪自体も悪い方向にいっている。大変恐縮ですけど、森会長が自ら外れていただければ、五輪はかすかに希望が残る。森会長にとって五輪は目の中に入れても痛くない子供のようなもの。その子供を守るために自分が身を引く。これが昭和世代の美学ではないでしょうか。

 ――後任はいますか

 山口 自民党の世耕弘成さん(参議院議員)が森会長について「余人をもって代えがたい」と発言しましたが、それはどうでしょう。森会長ほどの方ですから、自身が次を託す方を育てていないはずがない。スポーツの世界では教え子に監督を譲り、自分は総監督に就くケースが結構あります。1964年の東京大会では若い方が多く抜てきされたようです。今どきの若者にも力はあります。次世代を担う年代に思い切って任せる。そんなことができれば流れが変わるかもしれません。

 ――森会長のポジションはどうなりますか

 山口 まあ、名誉会長? 最高顧問? 辞めて役職が上がるのはおかしいと国民は思うかもしれませんが、立場が変わると役割も変わり、能力が生かされるケースもあります。IOCなどひと癖もふた癖もある人との交渉役にお出ましいただく機会もあるでしょう。ただ、森会長や(JOCの)山下(泰裕)会長は情熱的な方ですが、熱すぎて周りが見えなくなることもあるかと…。ちゃんと異論を唱える参謀も置いてほしいですね。

 ――まさに山口さんだ

 山口 私のことは顔を見るのもお嫌でしょうから(笑い)。まあ、私には私の役割があるので、今まで通り、忖度なしの発言で援護射撃させていただきますよ。