“坊主丸儲け”という言葉があるが、檀家制度の崩壊、お布施ダンピングによる収入減などで、寺院消滅危機を迎えているという。

 宗教ジャーナリストは「文化庁調査で現在、日本国内の寺院は約7万7000。そのうち、地方を中心に約2万寺が住職がいない無住寺。無住寺は年々増え続け、20年後には896の地方自治体で寺院が消滅すると言われています。檀家制度の崩壊が引き金になってますよ」と語る。

 檀家とは、特定の寺に属し、葬祭供養や墓の管理を行ってもらう家のこと。檀家が寺を経済的に支援するのが檀家制度だ。寺を維持する檀家数のボーダーラインは300軒前後と言われているが、地方の過疎地では300軒以下の寺が約8割を占めるという。

 冠婚葬祭業者は「過疎地に限らず、地方から関東圏に移り住んだ人たちの中には、墓参りの出費や維持費などの経済的な理由から、先祖代々受け継がれてきた墓を改葬(墓から遺骨を取り出して別の場所に移すこと)して、離檀するケースが増えているんです」と明かす。

 厚生労働省の衛生行政報告例によると、20年近く前に6万6634件だった改葬数が、17年度には10万4493件と増加の一途。改葬後は、経済的理由から「納骨堂」に納めるケースが大半だという。

「離檀だけではありませんよ。寺院収入のメインになるお布施の額が、僧侶派遣業者の出現でダンピングしているんです」(都内の元住職)

 お布施の額は宗派や地域で異なるが、通夜、告別式、戒名代を含めた葬儀一式で約30万~50万円が相場。しかし、大手僧侶派遣業者は最安値で3万5000円。10分の1の金額で葬儀ができる。

 前出の冠婚葬祭業者は「檀家が減ったことでお寺を手放した僧侶が急増しています。僧侶は雇用保険に加盟しているわけでもなく、退職金もない。フリーランスとして僧侶派遣業者に加盟するしかないんです」と言う。

 僧侶派遣業者はお布施の3割を手数料として取るが、中には5割以上取る業者もいて、貧困僧侶が続出している。日本人の“仏教離れ”が進んでいるだけに寺院消滅危機は深刻だ。