「地獄は永遠の苦しみ」「死後さばきにあう」「罪を悔い改めなさい」「神と和解せよ」…。日本全国いたるところで目に飛び込んでくる黒をベースに白と黄色の文字が書かれている恐ろしげな“キリスト看板”がある。大都会の繁華街から、地方に行くと、農家の納屋や漁村の小屋などに張られている。その製作現場を本紙がマスコミ初取材した。

 キリスト看板が作られているのは宮城県某市にある「聖書配布協力会」だ。「看板の発案者」であるリチャード・ノーマン氏(80)が取材に応じた。

「看板に書かれているのは神の御言葉や救いの御言葉です。ところどころ聖書から取って短くしてます。キリストの伝道の一つのやり方です。私たちはただのクリスチャンです。『聖書配布協力会』というのは宗教団体や教団ではなく、単なる名称です。聖書の教えを人々に伝えることを目的としてます」

 街角では拡声器でこの看板の文言を唱えている人を見かけることも多い。ノーマン氏も自ら行っている。

「私はキリストの話をずっとスピーカーかけながら毎日車に乗って伝道をしています。東京の上野もよく行きます。この施設には教会はなく、あっちのホールやこっちのホールで聖書を読みます。立派な建物を造ってお金使いたくない。献金などもありません」

“教会を持たない教会”というのは意外だが「イエス・キリストは心の中にいるので、どこで祈るかは関係ない」ということらしい。看板はいつから、何枚ぐらい張られ、その資金源はどこなのか。

 ノーマン氏は「私たちはよく仙台で英語を教えています。コンピューター会社もあります。そのお金を使って看板を作っています。45年間でだいたい35万枚。ステッカーも含め40万枚以上張りました。フォント(書体)はコンピューターで作っています。看板は、すべて許可をもらって設置しています。古い倉庫であっても誰か持ち主がいるのですから、黙ってやれば違反。看板に書かれている文言は、相手の方に選んでもらいます」と明かした。

 看板は勝手に張られているわけではなく、家主に交渉をしてから張られていたのだ。

「私は米国で空軍に入った。結婚して間もなくの昭和30(1955)年ごろ日本に来ました。その後、私生児や孤児を引き取ってここに小学校を作りました。日本に帰化しています。酒も飲まないし、たばこもやらないから体は神様のおかげで恵まれてます。今日もこの近くに設置した看板を掃除してきたところ。古くなったものは張り替えるですね」

 看板には「罪」「罰」「神」などといった日本人からするとぎょっとするようなものばかりで、不思議な看板だ。しかし、ノーマン氏をはじめとする会の人々は、純粋な気持ちでキリストの教えを広めようとしている。