安倍晋三首相の辞意表明を受け、韓国のメディアは安倍政権についての厳しい評価を伝えている。

 韓国の保守系紙の朝鮮日報、革新系のハンギョレは共に社説で、安倍首相が「日本の嫌韓の雰囲気を(支持層結集のために)政治利用した」と指摘。東亜日報は安倍氏が「歴史修正主義的な観点から歴史を美化しようとする傾向を見せた」と報じている。

 韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。

「安倍首相を敵視してきた韓国でも“安倍ロス”の喪失感に包まれているのだと思います。とりわけ経済政策ダメダメ、外交は四面楚歌、支持率続落の文在寅政権にとって、『日本の極右勢力=安倍政権』という分かりやすいヒールの存在は、失政から国民の目をそらすための道具として重宝してきたものでした」

 半導体原料の3品目の輸出規制厳格化、輸出手続きにおけるホワイト国除外、旧徴用工賃金問題に関する現金化への報復のほのめかし…。

「文政権としては、すべて日本の嫌韓派におもねる安倍政権の韓国イジメであるとして、“被害者”を演じてこれたわけです。その仮想敵がなくなってしまった。となれば、国民の不満は一気に文政権に集中するかもしれません」と但馬氏。

 しかし、そもそも安倍首相が嫌韓だというのは間違いなのだという。

「祖父・岸信介と朴正熙元大統領は刎頸(ふんけい)の友(友のためなら首を斬られても悔いがないぐらいの親しい関係)とも言える間柄で、その関係から安倍首相は学生時代に朴槿恵前大統領とは何度も会っていて、いわば幼なじみなのです」(但馬氏)

 2014年3月、その朴大統領(当時)とオランダ・ハーグで初の日韓首脳会談を行った。

 但馬氏は「そのとき安倍首相はにこやかに韓国語で話し掛けました。それまで、韓国の大統領に韓国語で話し掛ける日本の首相はいたでしょうか。しかし、関係改善を求める安倍首相に対しての返礼は無視だったのです」と指摘している。