【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】フィリピンのファストフード最大手「ジョリビー」が先日、米カフェチェーン「コーヒービーン&ティーリーフ」を3億5000万ドル(約372億円)で買収すると発表した。コーヒービーンは韓国などアジア、中東の20か国以上に海外進出し、日本には現在4店舗ある。そんな世界的チェーンの買収に驚きが広がっている。

 フィリピンは1898年から半世紀にわたり米国の植民地となり、その後も米軍が駐留。そのため音楽や食など米国文化の影響が強く、ハンバーガーは庶民に根付いた。その普及度は日本をはるかに上回り、チェーン店から屋台まで米国的なジャンクフードをよく見る。

 中でも1974年創業のジョリビーは、ハンバーガー1個80ペソ(約160円)という安さ、また地元民好みの味で大人気に。今やフィリピン国内で1000店舗以上展開、中華やピザなど関連チェーンも含めると3000店超ある。グループ全体の年間売り上げは、実に3000億円。

 世界各国でトップシェアを誇る米大手マクドナルドは、フィリピンに600店舗ほど。シェア1位になれないのはジョリビーがあるからだといわれている。「フィリピンでは小さな田舎町でも大抵ジョリビーがあり、ファストフードにもかかわらず『ソウルフード』と呼ばれている」とは現地駐在員。

 メニューはハンバーガーのほかパスタ、ライスとフライドチキンのセットなど幅広い。地元料理で多用されるバナナケチャップ(フルーツソース)をふんだんに使うため、独特の甘みがある。好みは分かれるところだが、さくさくクリスピーな「チキンジョイ」は「KFCよりおいしい」(前同)という声も。

 ジョリビーは米国や香港、サウジアラビアなど、フィリピン人出稼ぎ労働者の多い国にも進出。フィリピン国民のおよそ10%にあたる1000万人が海外で働いており「フィリピン人がいるところジョリビーあり」といわれる。

「今回の買収劇は日本進出の足掛かりか」と、日本に住むフィリピン人の間では早くも話題だ。東京・竹の塚のフィリピンパブで話を聞くと「肉製品を日本に持ち込むのは難しいから、ジョリビーはお土産で持って帰れないの。だから日本に店ができたら本当にうれしい」「実は去年、日本進出かもってニュースが流れたんだけど、実現しなかった。今回は期待してる」など、フィリピン人ホステスは声を弾ませる。

 在日フィリピン人は約27万人。この10年でおよそ10万人増加した。ジョリビーにとって、日本は魅力的なマーケットに違いない。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「日本の異国」(晶文社)。