キングが新たな金字塔を打ち立てた。J1横浜FCのキング・カズこと元日本代表FW三浦知良(53)は、2―3で敗れた川崎戦(23日)に今季初先発し、2012年にFW中山雅史(当時札幌)がマークした45歳2か月1日のJ1最年長出場記録を53歳6か月28日に更新した。過酷な練習に加えて私生活も徹底管理。50歳を過ぎても全力疾走できる肉体をキープし、大記録を達成したが、その裏舞台では、ストイックなキングの姿勢に〝反発〟の声も出ている。

 53歳となったカズは若手と同じハードな練習メニューをこなし、休日でも体を動かすなど真摯にサッカーと向き合っている。シーズン後も恒例となったグアム合宿を行うなど、ほぼオフなしの1年を過ごし、睡眠や食事など私生活も徹底管理。プロとしてピッチで躍動するため、ストイックな生活を送っている。

 年齢にあらがい努力する姿は各方面から称賛され、カズと同世代の元日本代表FW武田修宏氏(53)らOBたちも「50歳を超えてるのにストイックにやるなんてマネできないよ」と声をそろえる。ただカズがこだわるストイックな〝スタイル〟については、周囲から反発の声も出ている。

 カズの父の納谷宣雄氏は「カズヨシのやり方はどうかな。オフに入ってすぐにグアム(合宿)に行って、またチームのキャンプが始まる前にグアムへ行ったり…。どう考えてもやり過ぎ。体の心配もあるから少しペースを落とした方が良いと言ったけどな」と苦言し、元日本代表MFラモス瑠偉氏(63)もかねて「カズは練習し過ぎなんだよ。もう若くなんだから練習量を減らしていかないと体がもたなくなる。練習はほどほどにして、しっかりと体調を整えて試合に備えるほうが良いって」と指摘していた。

 実際、加齢とともに筋力や心肺機能が低下していく中、20代選手と同じトレーニングをこなしても〝現状維持〟すら難しいところ。しかも若いころと違って回復力も衰えているため、日々の練習などで疲労が蓄積していけば、大きな負傷につながる可能性もある。カズにとっては選手生命に直結しかねないため、年齢に見合った取り組みを求められた格好だ。

 こうした指摘についてカズの代理人も務めた田路雅朗氏(65)が胸中を代弁する。「練習量を減らせと言ってもムリだろうな。常に全力でストイックにやる、それがカズヨシのフィロソフィー(哲学)だから。マジメに取り組んだということが自分の糧というか自信や支えになっている。ブラジル時代から、ずっとやってきたことだし、やめることはないな。そこは言うこと聞かないさ」

 さらに田路氏は「(ブラジル時代の)カズヨシがまだ10代のころに選手寮に虫か何かが大量発生して俺の家に泊まりに来たんだけど、土砂降りの中『ちょっと走りに行ってくる』と。夜も遅くて治安も良くないから〝やめとけ〟と言ったけど『やらないといけない』って一人で走りにいったっけ。あのころから姿勢はまったくブレていない」と振り返った。

 自らの信念を貫いてプロ35年目を迎えているカズは、チームの勝利とさらなる最年長記録の更新のため、走り続ける。