【芦屋ボート・プレミアムGIレディースチャンピオン:カウントダウンコラム「ママさんレーサーの挑戦」(2)】田口節子(36=岡山・85期)が目下絶好調だ。最近10節で8優出2V、審査中の今期(18年前期適用)は勝率7・73。まさに猛爆モードに突入しているが、本人は至って冷静に現状を分析する。

「コンスタントに(エンジンを)出せているって感覚はないです。波もあります。やっていることも同じ。違いがあるとすれば気持ちの部分かな」

 田口といえばセンター、アウトから胸のすくような攻めを見せる半面、フライングも多かった。

 だが産休から復帰した15年11月以降のS事故は2本。今年はここまでゼロで来ている。

「年間30節くらい走っていれば当然、悪いときもある。前は無理をしていたからFを切っていたし、そこから悪循環になっていました。今は悪いことがあっても受け止められるようになった。“いいときに勝てばいい”って切り替えられます。無理をしなくなりましたね」

 メンタルが進化した要因は何か。「年を取ったってことです(笑い)」と本人は冗談交じりに語るが、一番は家族が増えたことだろう。15年5月に長女が誕生した。

「目標が変わったんですよ。今は“女王”を取ることが目標ではなくなった。それよりも一節一節を濃く過ごしたい。そう思うようになりました」

 目の前の一走に対して、より丁寧に臨むことで事故が減り、以前と変わらない成績もついてくる。キーワードは“自然体”。出産を経験した多くの女性アスリートが苦労する復帰へのプロセスも独特なものだった。

「ジムに通った? いいえ、特別なことはしませんでした。ボートで使う筋肉はボートに乗ることで鍛える。訓練したのは3か月くらいで、あとは仕事をしながらです。体脂肪率や筋肉量を測定する機械があるんですが、以前と全く変わりません」

 精神的な成熟は守りに入ったことを意味しない。目前に迫ったレディースチャンピオンについてもこう言い切った。

「大きいレースをもう一回取りたい気持ちはもちろんあるし、できるとも思っています」

 大人への階段を上った田口。芦屋の大一番でも怖いもの知らずの若手や、衰えを知らない大ベテランたちを一蹴しそうだ。

☆たぐち・せつこ=1981年1月14日生まれ。岡山支部所属。99年11月下関の一般戦でデビュー。2003年11月のびわこで初優勝。GⅠは過去7回優出し11年・三国、12年・多摩川とレディースCを連覇。昨年も優出(3)着と女子戦線では圧倒的な存在感を見せている。多数のGⅠ・SGウイナーを輩出した85期“銀河系軍団”の一員。身長161センチ。血液型=AB。