目指せ!「ヤングダービー」U-30の咆哮

【松尾拓(27=三重・114期)】双子の兄・充(112期)とともに「松尾ツインズ」として、ボート熱の高い地元・津のファンの間ではすっかりおなじみの顔となった松尾拓(27=三重)。

 三重支部では96期・新田雄史以来となる「やまと卒業チャンプ」で、訓練生時代は在校勝率8・24、リーグ戦4優勝と圧倒的な成績を残した。デビュー後も3期目にして早々とA級昇格。先月には地元・津で初優勝も遂げ、噂にたがわぬ走りを見せている。

 そんなスーパールーキーだが少し“遠回り”もあった。実はレーサーを志望したのは19歳の時。やまと学校に合格したのは7回目のチャレンジだった。「半分諦めていた時期もあったが、兄が受かって、もう1回頑張ろうと」。高校を卒業後、社会人として働きながらの受験だった。

 だがこの“遠回り”は決して無駄にはなっていない。ターンやスタート力といった技術面に対する評価も高いが、それ以上に感じたのは「同じ失敗を繰り返さない」ということに対する意識の強さだ。

 昨年4月の津ルーキーシリーズは自身初の優出を果たし、しかも1号艇だったものの転覆。「この節はスローに初めて入ったんです。思わぬ前づけもあって、少し動揺した部分がありました」と振り返ったが、先月の優勝はそれ以来の1号艇で決めてみせた。

 新人には付き物ともいえるフライングも1本だけあるが「A級勝負駆けの時にやってしまったんです。それ以来、気をつけるようにしています」と自分を冷静に見つめる目を持っている。メンタル面はやまと受験や社会人での苦労が生きているのだろう。

 また、先輩にも恵まれたと語る。師匠の矢橋成介は、支部長を務めた経験もあり、選手間でも人望が厚い。面倒見が良く「同期より調整がいろいろ試せている」と感謝の言葉を口にする。

 もちろん兄・充にもいい刺激を受けている。現在は拓の方が出世スピードは早いが「兄とはデビュー戦が一緒で、自分は最初消極的だったんですが、兄は握って外を回ってました。自分もそれを見て、道中は外マイ中心で、常に1着を狙うレースを心掛けています」と切磋琢磨する。

 目標はグランプリ制覇。地元ファンは充とともに大舞台を席巻する日も遠くないと信じている。

☆まつお・ひろむ=1988年9月3日生まれ。三重県志摩市出身。三重支部の114期生。2014年5月の津でデビュー。同年6月の蒲郡で初1着(3節目)。初優勝は16年1月の津一般戦。同期に中村桃佳がいる。168センチ。血液型=B。