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【ボートレース・思い出の名勝負】中村裕将 優勝と同じ数だけ切ったフライングに「怖いもんなかった」


ボート界のレジェンド 語り継ぎたい思い出の名勝負

家族の名前が刻まれたヘルメットを手にする中村

【中村裕将(53=埼玉・51期)】没個性化が指摘される現代だが、かつてボート界には「超」がつく個性派が存在した。1990年代中盤から後半にかけて、恐れを知らぬスタートで名をはせた中村裕将(53=埼玉)もその一人だ。比類なきスタート力でもぎ取ったGⅠ初制覇は、約7700走の中で最も思い出深いレースだという。

 プロ生活33年のフライング(F)数は「44回」。なんと優勝回数と同じ数だけスリットオーバーしてきた。1期間に2本のFを切る「F2」は実に8回を数える。

「若いころは頭のネジが1本飛んでたよ。F休みの日数とか事故点とか全く考えず、とにかくスタートを行ってた。怖いもんなかったなあ」

 その最たる例が1993年2月の江戸川GⅠ「関東地区選手権」だ。中村は懐かしそうに「忘れられないレース」と振り返るが、実はこのシリーズの2節前の当地でFを切った。にもかかわらず、スタートを控える意識は全くなかった。

「アホですよ(笑い)。予選からスタートをバチバチ行ってね。結局、予選トップで優勝戦1号艇に乗ったんだ。最後(優勝戦)も確か0台のスタートだったんじゃない?」

 その通り! 優勝戦はインからコンマ05のトップスタート。電光石火の速攻劇で逃げ切り、GⅠ初優勝を成し遂げた。本人は「ただスタートで攻めただけ」と謙遜するが、この優勝には2節前の「F」が大きく絡んでいる。

 当時はFを切った翌日は「一日見学」という罰則があり、中村はその時間をペラ調整に充てた。「丸一日かけて叩き変えたらエンジンがすごく出た。結局そのペラで(2節後に)優勝したんだ」。ある意味、「F」がもたらした記念初制覇と言える。だが、ここからが中村らしい。「あれで逆にスタート行けば何とかなる!って変な自信がつき、その後もバンバンスタート行って…」。次の期に「F2]となり、せっかく手に入れた初SG出場の権利(翌年3月のクラシック)を棒に振ってしまった。

 最後にF2となったのは12年前期。「なぜかこたえてね…。もうスタートだけじゃ、どうにもならないって思って」。その後はFが激減し、ここ4年で1本しか切っていない。

「スタートで攻めたころは若さと独身の強み」と目を細める中村には今、大切な家族がある。

「僕はこの仕事が好き。とても大変だけど、支えてくれる妻がいて応援してくれる子供がいるから苦にはならない。家族には感謝ですよ」

 37歳のときに結婚した。妻・聖蓮さん、長女・祐梨さん(中2)、長男・繕己くん(小6)。家族3人の名前は中村のヘルメットに刻まれている。

☆なかむら・ひろのぶ=1962年8月24日生まれ。埼玉支部の51期。82年11月の戸田でデビュー。同節5走目に初1着。86年の蒲郡一般戦で初優勝。93年2月の江戸川・関東地区選手権でGⅠ初V。98年7月の江戸川43周年で2度目のGⅠ制覇。97年7月の平和島オーシャンカップでSG初出場。SGの優出は未経験。通算44V(GⅠ・2V)。同期に松野京吾、山室展弘、西田靖、岡本慎治がいる。身長165センチ。血液型=B。

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