【ボートレース宮島SG「第25回グランドチャンピオン」:カウントダウンコラム(2)】宮島SG「第25回グランドチャンピオン」が23日に開幕。今、ボート界にはニュージェネレーション旋風が巻き起こっているが、経験豊富な中堅世代も黙っていられない。そんな若手の壁になる3人のツワモノを紹介する直前連載の第2回は菊地孝平(36=静岡)だ。

「そろそろ結果を出さないとなぁ」。グラチャン開幕の1週間前、江戸川GⅠで予選落ちした菊地はポツリとこう漏らした。

 2014年はSG2つをぶっこ抜き、年間獲得賞金トップに輝く大車輪の活躍。「すべてがいい方向にいった」と振り返る昨年から一転し、今年は目立った成績を残せていない。

「調子は悪くない、なんて言ったらウソになりますね。でも、あがくと必ず悪い方向にいく。今はガマン、ガマン。耐えるしかないです」

 こんな低迷時のメンタルコントロールは彼の専売特許だ。

 2~3年前、SG優勝から遠ざかった一時期は「自分の努力の仕方は本当に合っているのか?」と自問自答を繰り返し、趣味の山登りやうどん作りに没頭しながら「自分探し」を続けた。そして昨年4月、偶然見たテレビ番組が転機になった。危険と隣り合わせ、命懸けで作業するクレーン運転士の「淡々と」という言葉が妙に胸に響いた。

「スッと心に入ってきたんですよね。すぐに実践しました」。直後のSGオールスターを勝つと、続くグラチャンも連続制覇。試行錯誤し、苦しみの果てにつかんだSGタイトルはそれまでの優勝とはひと味もふた味も違った。

 そんな菊地は今さらなる壁にぶつかっているが、同時に新たな領域にも挑戦している。ターゲットはずばり「ニュージェネレーション」だ。

「カヤ(茅原)、毒島(誠)、(桐生)順平の3人は今のボクにない攻め続ける姿勢、常に1着を狙う気持ちを持っている。経験を積むとどうしてもリスクとリターンを頭で計算してしまう。でも、彼らはリスクを恐れずリターンしか見ていない。これは強いですよ。刺激にもなるし、勉強にもなりますね」

 気持ちだけではない。菊地は彼らの超高速ターンにも目をつけている。

「ターンの質は明らかに以前と違う。かつてモンキーターンが若手世代で使われ始めたとき、当時の先輩方が抱いた気持ちと同じ思いを今、僕らもしている気がします。だから、ボクも彼らのターンの一部を取り入れようと思っています」

 淡々と、着実に進化を続ける菊地。連覇を狙うグラチャンでは刺激をくれた新世代に真っ向から挑む。

☆きくち・こうへい=1978年8月16日生まれ。静岡支部の82期生。98年5月の浜名湖でデビュー。2001年5月のびわこで初優勝。GⅠ初Vは04年7月のとこなめ51周年記念、SG初Vは05年8月の若松メモリアル。14年は年間SG2勝(オールスター、グラチャン)で「最優秀選手」「最多賞金獲得」「記者大賞」の“3冠”に輝く。通算45V(GⅠ7V、SG4V)。身長165センチ。血液型=AB。

 ※次回掲載は中島孝平