DDT、ノア、東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレスの4団体合同興行「サイバーファイトフェスティバル」(6日、さいたまスーパーアリーナ)で、GHCヘビー級王者の武藤敬司(58)が丸藤正道(41)に敗れ、王座から陥落した。

 序盤から徹底して丸藤のヒザを攻め立てた。さらにシャイニングウィザード3連発からエメラルドフロウジョンを発射すると、武藤は大バクチに出る。何とコーナーポストを駆け上がったのだ。

 2018年3月に両ヒザ人工関節置換手術を受ける際の条件は、ムーンサルトプレスを完全封印することだった。その封印を解き、鮮やかに宙を舞った武藤の肉体は丸藤にクリーンヒット。完璧な一撃が決まった。

 ところが禁断の月面水爆を放った武藤は、両ヒザを強打したダメージでカバーが遅れてしまう。丸藤にカウント2でキックアウトされると、一気に失速。最後は打撃のラッシュから虎王・零に沈められ、痛恨の逆転負けを喫した。

 伝家の宝刀が諸刃の剣であることは百も承知だったはず。にもかかわらず武藤が解禁を決意したのはなぜだったのか。本人はノーコメントで会場を後にしたが、武藤の「伝言」を預かったという関係者によれば、その理由は主に3つあった。

「1つ目として武藤さんは『ノアとは2年契約を結んでいるから、ケガをして欠場しても安心だと思った』と言ってました。それに加えて『エメラルドフロウジョンを返されて、丸藤に勝つにはこれしかない』と決断したそうです」(関係者)

 そして最後の理由が、この日の興行が4団体の合同興行であり、GHC戦がトリプルメインイベントの一つだったことだ。同関係者によれば武藤は「合同興行である以上、必ず試合内容を比べられる。俺は『やっぱりノアの試合が一番だった』と思ってもらえる試合をしたかった」と語っていたという。王者として、ノアの所属選手としての責任感が、多大なリスクが潜むムーンサルトプレス解禁に踏み切らせた。

 実際にムーンサルトプレスが決まった瞬間は、会場中から禁じられているはずの大歓声が湧き上がった。この日一番のインパクトを残したのは間違いなく、大トリで敗れた58歳のプロレスリングマスターだった。