新日本プロレス25日の東京ドーム大会で、IWGP世界ヘビー級王者の鷹木信悟(38)が棚橋弘至(44)の挑戦を退け、初防衛に成功した。飯伏幸太(39)の欠場によりメインカードが当日変更となる前代未聞の緊急事態で、見事に主役を務め上げたが、現状には決して満足していない。ライバルたちの復活を待ちつつ、新設以降アクシデント続きのIWGP世界王座の「顔」としてベルトの価値を向上させる決意だ。

 当初、挑戦が予定された飯伏に代わってリングに上がった棚橋の猛攻にさらされた。鷹木はカミゴェからのハイフライフローを浴びながらも、王者の意地で3カウントは許さない。35分過ぎのハイフライフローを阻止するとSTAY DREAMで逆転し、最後はパンピングボンバーからのラスト・オブ・ザ・ドラゴン(変型ドライバー)で激闘を制した。

 試合後のリング上ではEVILの闇討ちを受け遺恨が発生。V2戦での激突が決定的となったが、メインカードの当日変更という緊急事態にも動じず堂々と王者として戦い抜いた。鷹木は「東京五輪に負けないようにと言ってきた中で行われた東京ドームで、プロレス界の象徴である棚橋に勝ったんだ。俺としては今日でこのベルトが本当の意味でプロレス界の金メダルになったと思ってる」と勝ち誇った。

 とはいえ、今年3月に新設された同王座は、波乱万丈の展開が続いている。新設そのものが賛否両論だった上に、2代目王者のウィル・オスプレイは全治未定の首の負傷でベルトを返上。加えて今回の飯伏の緊急欠場と、まるで呪われているのではないかと思えるほど災難が続いている。

 鷹木はそんな中でチャンスをつかみ、新たな王者像をつくろうとしている。「確かに俺は運がいいかもしれない。でも間違いなく運も実力のうちだから。そうやってここまで這い上がってきた。こうなったら飯伏とやるまで負けられないし、もちろん(5月に敗れている)オスプレイのことだって頭にある。ベルトの価値が上がれば、自然と自分の価値も上がると思っている」。飯伏との約束、オスプレイへの雪辱という2つのテーマを設定した上で長期政権を見据えた。

 憧れ続けた東京ドームのメインにたどり着いたが、緊急事態宣言下の大会とあって観衆は5389人にとどまった。鷹木は「正直寂しいよね。本来思い描いていた状況ではないわけだから。早くコロナが明けて、再び熱狂空間というものを作りたい。まだまだ満足してないよ」と、超満員の東京ドームのメインに立つことを次なる目標に掲げた。

 混迷のIWGP世界戦線で這い上がったザ・ドラゴンは、いまや東京スポーツ新聞社制定「プロレス大賞」MVPの最有力候補だ。比類なきバイタリティーとジャイアニズムで業界をけん引する。