王道の「クラシック・マスター」となる。全日本プロレスの筋肉獣・ゼウス(38)が原点回帰による3冠奪還を誓った。祭典「チャンピオン・カーニバル(CC)」で全勝優勝を果たし、17日に地元大阪のエディオンアリーナ大阪第2競技場大会で3冠ヘビー級王者の諏訪魔(43)に挑戦する。約2年ぶりの戴冠に燃える筋肉獣を、ある重大な決意が支えている。

「今のプロレス界のトップを走る団体は、どんどんWWE化が進んでますよね。でも僕にはヒーローのショー化にしか見えない。僕が目指すのはむしろ基本的な技ですごみを見せつけられる、昔のように一発が重い本質的なプロレスです」

 確かにCC優勝の原動力となったフェースロックはいわゆるシンプルな顔面締め。必殺技のジャックハマーも公式戦では宮原健斗(31)戦しか出さなかった。重いドロップキックも1試合1発と決めている。3冠初戴冠時と比較すると大技は最小限になったが、内容は重みを増しており、技術で観客を魅了できる「重厚なプロレス」を実現し続けているのも事実だ。

「やはりジャイアント馬場さんとアントニオ猪木さんの時代の試合は素晴らしい。20分、30分もシンプルな腕やバックの取り合いだけでお客さんをうならせた後に一撃必殺の技を出す。それと(ジャンボ)鶴田さんの圧倒的な強さと存在感、頭突き一発だけで試合を成立させる大木(金太郎)さん、四天王時代の三沢(光晴)さんの激しさ…。ホント、昔の試合から学ぶことは多い」とすでに往年の名勝負からシンプルな新殺人技のヒントを得たことを示唆する。

 ちなみに取材時も1983年6月8日、蔵前国技館大会のNWA世界ヘビー級戦、王者リック・フレアー対ジャンボ鶴田(鶴田の1―0から2本目は60分時間切れ)を前夜からビデオ研究している最中だった。

「40歳目前だけど僕なりの技術の進化を続けますよ。いきなり開始から腕の取り合いを20分続ける試合をするかもしれないですけどね、ハハハッ。とにかく今は勝利しか見えない!」とゼウスは名勝負を食い入るように見ながら、約2年ぶりの戴冠へ闘志をたぎらせた。