各スポーツ競技の早期の再開は難しそうだ。新型コロナウイルスに関する政府の専門家会議(19日)が公表した新見解は、大規模イベントの開催について「慎重な対応が求められる」とし、4月上旬の再開を見据えてきたプロ野球やJリーグなどの各団体は、事実上見直しを迫られることになった。一方でプロレス界は独自路線を貫く構えだ。

 新型コロナウイルスに関する政府の専門家会議は、大規模イベントを開催する場合に主催者や参加者が注意すべき事項を示した。感染リスクに対応できないなら「中止や延期をしてもらう必要がある」と強調。4月10日の開幕を目指していたプロ野球をはじめ、4月3日に再開予定だったJリーグ、今季大会を自粛してきたゴルフなどの各競技団体は、通常開催の時期を慎重に見極める必要がありそうだ。

 専門家会議では、あくまで「主催者や参加者の判断」としつつも実施には細かな“ルール”を設定。体温測定や症状の有無を確認し、具合の悪い人は参加を認めないように要請。感染が広がっている国を14日以内に訪れた人も参加すべきではないとした。体調不良の人が無理して訪れるのを避けるため、キャンセル代について配慮が必要だと指摘した。

 会場では手洗いする場の確保、手で触れる場所の消毒などの徹底を求めた。入場者数を絞り、互いに一定の距離を保つなど密集しないようにする必要性を強調。声援などで大声を出すことは避け、屋内の場合は適切に換気するべきだとした。

 となれば、数万人規模のファンが集結するプロ野球の観戦は事実上、不可能となる。日本野球機構(NPB)は23日に12球団代表者会議を開き、新たな開幕日を検討するが、先行きは見通せそうにない。Jリーグの村井満チェアマン(60)は25日に再開の判断を下す予定だったが、今回の“指針”で再延期は決定的。ゴルフ界も今週中に今後の見通しを示すが、自粛を続けるとみられる。

 そんな中、プロレス界はあくまで独自路線を貫く構えだ。20日に東京・後楽園ホール大会を開催するDDTの高木三四郎社長(50)は、専門家会議の新見解に「具体的な数字が出ていないので何をもって大規模イベントになるのか判断が難しいところですね。ただ我々は注意事項に示されたものは守って興行をやる予定です。これ以上中止にすることも難しいですし。もし国から大規模イベントに関する(中止)要請があれば考えます」と語った。

 21日にはノアが群馬・YAMADAグリーンドーム前橋で、23日には全日本プロレスが後楽園でそれぞれ興行を再開予定。24日には、プロレス界でいち早く興行を中止にした女子プロレス「スターダム」も後楽園大会を開催する方向だ。また31日には業界の盟主・新日本プロレスが東京・両国国技館大会を予定している。同団体関係者によると、20日以降に社内、会場と協議する方針だという。

 ある団体幹部は「今回の新見解も具体性に欠ける。例えばどこの地域だとか、会場の人数というものが明確に示されていない」と困惑し、別の関係者は「どこの団体も感染者が出たら怖い部分はある。だけど、中止にしたらまわらない団体が大半。イベントを継続しているのはプロレスだけだけど、このまま興行を続けるだろう」と内情を打ち明けた。

 大規模イベントは集団感染のリスクが高いほか、遠方から参加する人もおり、感染者が各地に広がって新たなクラスター(感染者の集団)を生む恐れもある。慎重な姿勢のプロスポーツ界と強行路線のプロレス界の決断は果たして――。