〝ご意見番〟の見解は――。昨年大みそかの格闘技イベント「RIZIN.33」(さいたまスーパーアリーナ)で行われた炎上系ユーチューバーのシバター(36)VS元K―1ウエルター級王者・久保優太(34)のMMA戦に「八百長だったのではないか」との疑惑がもたれ、ネット上で波紋を呼んだ。RIZINの榊原信行CEO(58)が11日に状況を説明する事態にまで発展したが、この騒動に総合格闘家でプロレスラーの〝バカサバイバー〟青木真也(38)が毒ガスを噴射。「格闘技界には今こそ猪木イズムが必要だ!」と力説だ。

 問題の試合は序盤から久保がカーフキックなどを放つものの全て単発で後手に回る形になり、逆に1ラウンド(R)中盤にシバターのパンチがクリーンヒット。グラついた久保が持ち直そうと首相撲を仕掛けたところ、シバターが飛び付き式のアームバー(腕ひしぎ十字固め)で仕留めた。

 疑惑が浮上したのは試合後だ。シバターから体調不良を訴える泣き落としがあり、1Rは手加減してほしいと求められたことを示唆する通話記録やLINEでのやり取りが久保サイドからSNS上に流出し、一気に拡散。〝八百長〟という言葉も独り歩きしてネット上で大騒動になった。

 青木 そもそもここまでの騒ぎになったのは、2人が〝可燃性〟の高い人物だったからですよ。普通なら不審火くらいで済むこと。ところがよく燃える2人に脊髄反射で飛びついた格闘技関係者がワーワー騒いで、気づけば火柱が立っていただけです。八百長? 本当に難しい問題ですよ。どこから当てはまって、どこから当てはまらないのか。ただ、今回シバターがやったことは八百長じゃなくて〝申し合わせ〟だと思います。あれが八百長だったら、例えば会見で言ってたのと全く違う戦術をして相手をだまして勝つのも八百長になるよね。俺のシャオリン戦も八百長になっちゃうじゃん! 俺は、やってないものはやってない!

 確かに、試合前の発言で相手に揺さぶりをかけるのは古くからある戦法の一つ。「ボコボコに殴り合ってやる!」などと言っておきながらゴングと同時にタックルを仕掛けることも、よく見られる戦術だ。

 青木もこの陽動作戦で白星を得たことがある。2009年7月の「DREAM.10」で世界トップの柔術家で修斗世界王者のビトー〝シャオリン〟ヒベイロと対戦。事前映像などで再三寝技の練習をしていることを公開しながら、ふたを開ければ立ち技の勝負で完封し判定勝ちした。「寝技でいく」と欺き、満面の笑みで大ブーイングを浴びたのだ。

 青木 (なぜか胸を張って)あの時は運営までだまして映像を撮らせたんですよ。敵をだますならまず味方からっていうから。そういう意味でシバターは直接敵をだましている分、まだ性根が優しい。俺たちのようなホントに悪い人間はまず味方をだますから。(ケンドー)カシンを見れば分かるだろ。久保も脇が甘かった? まあ、そうだよね。俺だったら電話なんかかかってきても「うるせえバカ」で終わるし、ケガしてるってわかればそこを攻めるし。かかってきたことはないけどね。(15年12月に)初めてRIZINに出た時? そうそう、俺はONE(チャンピオンシップ)から参戦する〝外部の人間〟だったから、何をされるかわからないと思って、用意された水も飲まなかった。下剤が入ってるかもしれないじゃん。試合前って、それくらい警戒してもしすぎることはないんだよ。

 今回の騒動を受けて榊原CEOは、事前に選手同士が電話などでやり取りすることを禁止すると契約書に盛り込むことで対策を採ると発表。これに「ルール化していくしかないんだろうけど」とした青木はこう続ける。

 青木 正直、あんまり意味はないかもしれない。なぜならこれは時代なんだよ。今は恥がない時代だから。選手も関係者も一部マスコミまで長い目じゃなくて、目先の再生数に走る時代だから仕方ないんだ。まさに、榊原さんが言っていた「品性下劣」になっているんです。矜持がないから申し合わせして、やり取りを流出させて、動画を拡散させていく。だから本当に今、必要なのは「猪木イズム」なんですよ。「お互いのプライドがルール」。その魂をもう一回、みんなで考え直そうじゃないか!

 アントニオ猪木氏と故マサ斎藤さんが激闘を繰り広げた1987年10月の「巌流島決戦」で唯一定められたルールを引き合いに出して力説。最後に「でもさ、八百長と浮気は認めちゃダメなんだよ。俺は、やってないものはやってない!」と語気を強めた。

 一連の炎上騒動は榊原CEOの説明を受けて収まりを見せるのか。カギを握るのは〝燃える闘魂〟の言葉なのかもしれない。