格闘技イベント「RIZIN.24」(27日、さいたまスーパーアリーナ)で総合格闘技デビューする大相撲・元十両貴ノ富士のスダリオ剛(23)が本紙のインタビューに応じ、決戦を控えた心境を語った。暴力問題などで昨年10月に相撲界を引退した後、再起の場所に格闘技を選んだ理由は何だったのか。また新たなリングネームに込めた母への愛、そして2013年から5年間指導を受けたかつての師匠・元貴乃花親方(48=花田光司氏)への思いとは――。

 ――総合格闘技に挑戦しようと思った理由は

 スダリオ:2回目の問題を起こしてしまった当初、やるつもりはなかったんです。妻にも「田舎に帰ってひっそり暮らそう」という話をしていました。「もう人前に出たくない」というふうになっていたんですが、妻から「格闘技をやりたいんじゃないの?」と聞かれて「(やっても)いいのかな」って思うようになったのがきっかけです。

 ――なぜ奥様は分かっていたのか

 スダリオ:1度目に問題を起こした時、まだ結婚してなかったんですが「辞めて何か格闘技をやろうかな」という相談をしていたので。もちろん今、人前に出ればいろいろなことを言われるのは覚悟しています。でももう一度、やり切れていない気持ちやエネルギーを総合格闘技に全て注ぎ込もうと思いました。

 ――初代修斗ヘビー級王者・エンセン井上(53)の指導を受けている

 スダリオ:(元大関)小錦(KONISHIKI)さんにいろいろ相談をしている中でつないでもらって。エンセンさんが小錦さんのハワイの学校の後輩だったみたいで、そのつながりで。

 ――目標は

 スダリオ:世界中のヘビー級の選手をぶっ倒したい。UFC王者? はい。でもまずはRIZINでしっかりファンの方を興奮させて、その先でRIZIN代表としてUFC王者を倒しにいくのが夢です。僕はハーフだけど心は日本人。日本人もヘビー級でやれるんだというのを見せたい。

 ――リングネームの由来は

 スダリオ:(フィリピン人の)母親の本名(スダリオ・ケゼィア)から借りました。「貴ノ富士」の名は使いたくなかった。MMA(総合格闘技)ファイターにしっかりシフトしたっていうのが、体つきだけじゃなくて名前で伝わればいいなって思って。

 ――なぜ母の名を

 スダリオ:子供のころ、母子家庭ですごく貧乏だったんです。(母の)財布に1000円しか入っていない時とかもありました。それくらいきつい中でも母は僕を育ててくれた。僕と弟(幕下貴源治)と、お姉ちゃんもいるので3人きょうだい。3人も、外国で一人で育てるのって大変だったと思う。

 ――偉大な母だ

 スダリオ:だから早く親孝行したいのに、僕が問題を起こして心配させて、泣かせてしまってばかりで…。そういうのも含めて、母親の名をリングネームにしました。活躍して喜んでもらいたいから。ここまで母に本当にいい報告ができていない。たとえ、いいことがあっても、僕自身がそれをダメにしてきた。だからこれからはいい報告だけできるようにしたい。

 ――母をもう泣かせることはできない

 スダリオ:はい。今までのことは自覚が足りなかったです。甘さがありました。これからはしっかり自覚を持っていきたいです。RIZINに契約してもらって、迷惑をかけないようにしたい。期待を裏切りたくない。

 ――ディラン・ジェイムス(29=ニュージーランド)と激突するデビュー戦に向けて

 スダリオ:相手を潰しにいく気持ちで、立ち向かう気持ちと姿勢を見てほしい。勝ち負けだけじゃなくて、世間の人たちに「今後が楽しみだ」「次の試合が見たい」と期待感を持っていただける試合がしたいです。

 ――最初の師匠だった花田光司氏には

 スダリオ:相撲界にいた時は貴乃花親方の教えに反してしまって、すごく申し訳ない気持ちしかないです。総合格闘技の世界では貴乃花親方に教えてもらった大切なものを忘れずにやっていきたい。本当に、感謝しています。中学を卒業してからずっとお世話になって、いろんなことを教えていただきました。それを大事にして、次の世界ではいろんな人に恩返しがしたいです。


【力士引退から現在までの経緯】 スダリオは2018年3月場所中に付け人に暴力を振るい、日本相撲協会から「出場停止1場所」の懲戒処分を受けた。師匠の貴乃花親方の協会退職に伴い同年10月に千賀ノ浦部屋に移籍したが、昨年の9月場所前には付け人に対する2度目の暴力行為が発覚。差別的発言をしたことも問題視され、相撲協会の理事会で自主引退を促された。

 これに前後して、スポーツ庁に上申書を提出するなど相撲協会への対立姿勢を強めて現役続行を希望したが、10月に引退届を提出し受理された。その後、今年7月に格闘家転向を表明。当初、RIZINの榊原信行CEO(56)は獲得に積極的ではなかったものの、50キロの減量やエンセン井上の内弟子となりトレーニングに取り組む姿、そして「総合格闘技に骨をうずめる」との言葉を受けて一転、契約となった。


☆すだりお・つよし 本名・上山剛。1997年5月13日生まれ。栃木・小山市出身。父が日本人、母がフィリピン人の双子として誕生し、幼少からサッカー、空手、バスケットボール、ボクシングを経験。中学卒業後の2013年に弟(貴源治)とともに貴乃花部屋に入門。同年3月場所で初土俵を踏んだ。18年の3月場所で十両昇進を決め、史上初の双子関取となって注目を集めたが、2度の暴行事件を起こし19年に引退。通算成績は165勝112敗28休。190センチ、115キロ。