安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者を描く映画のタイトルと主演が15日、発表された。タイトルは「REVOLUTION+1」。主人公の山上容疑者を思わせる男役は、数多くの連続ドラマに出演する30歳俳優が演じる。手製銃を構える、あの衝撃シーンを再現した場面写真を入手し、問題作に迫った。

 山上容疑者を描く映画はSNS上で物議を醸すこと必至だ。製作サイドは、昔の社会派映画のように、映画化に踏み切ることで安倍氏銃撃事件をタブー視せず、もっと議論を深めてほしいとの思いを込めたとしている。

 同作はドキュメンタリーではなくフィクション。タイトルの「REVOLUTION+1」に込めた意味を確認すべく、メガホンを取った足立正生監督(83)のケータイを鳴らしたが、取材は断っているという。「日本赤軍」の元メンバーでもある足立監督は製作サイドを通し、山上容疑者について「私の想像を超える事件を実行した者」とコメントした。

 同作で脚本を務めた脚本家の井上淳一氏(57)は取材に対し、タイトルは製作サイドで協議し、最終的に足立監督が決めたと説明。「私の解釈では」と断った上で、足立監督が日本赤軍時代に仕かけようとした〝革命〟の意味合いはもちろんあり、さらに「山上容疑者がやったことは革命ではないけど、自民党と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の癒着という暗部をさらけ出した」との思いをタイトルに込めたという。

 劇中では「山上」の実名は使わず、山上容疑者を思わせる「男」を主人公にすえ、その役に俳優のタモト清嵐(そらん=30)が起用された。

 タモトは、連ドラでは複数のNHK大河ドラマやテレビ朝日系「相棒」シリーズに出演。映画では「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(2008年)で連合赤軍のメンバー役を務めるなどしており、こういったキャリアが今回の起用につながった。

 井上氏は、山上容疑者を思わせる男役の人選は「事務所所属の俳優では難しかった」と打ち明ける。タモトはフリーで、事務所のしがらみがなかったことが幸いしたが、「この役はフリーの俳優でも敬遠すると思う。そこをタモト君は作品をおもしろいと思ってくれた」と心意気を買う。

 タモトは製作サイドを通じて、「誰かがやるなら自分がやりたかった」とコメント。山上容疑者は事件当日の7月8日、メガネと白マスク、グレーのシャツにショルダーバッグという姿で手製銃を使って安倍氏を狙撃したが、同作の場面写真ではタモトが忠実にあの衝撃シーンを再現しようとした様子がうかがえる。

 映画は安倍氏の国葬(27日、東京・日本武道館)に合わせて26日に東京・新宿の「ロフトプラスワン」、国葬当日の27日に渋谷の「ロフト9」ほか、全国7~8か所のミニシアターで公開予定。ただ、これは製作途中の作品の上映で、完成版は年末~来年に公開予定としている。