衆院選(31日投開票)が19日公示され、12日間の短期決戦が始まった。政権選択選挙で、自民党や立憲民主党の候補者は注目を集めるが、ミニ野党や無所属の候補者はなんとかメディアや有権者にアピールしようと、あの手この手で初日から大攻勢をかけた。テレビや一般紙では、スポットの当たらない全国の選挙現場を追った。

【東京・渋谷】NHK前を第一声に選んだのは「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」(NHK党)の立花孝志党首(54)。受信料を巡るバトルでは、2年前に同地での街頭演説の内容で、NHKから威力業務妨害容疑で訴えられ、公判中となった因縁もある。

 再び本陣に攻め込まれたNHK側は確認できただけでもカメラ3台、関係者10人以上、警備員3人の万全な態勢で迎え撃った。うち1台のカメラはNHKの敷地内に設置され、選挙カーを真正面からとらえるベストポジション。これには立花氏も「そこから撮るのが間違いない」と笑うしかなかった。

 NHKのスクランブル化を訴えた立花氏は「テレビ全局が来ていたね。やはり国政政党になると公平に扱わないといけないし、注目度が全然違う」と満足げで、「NHKをぶっ壊す」ポーズをカメラマンのリクエストに応じて、30回以上披露。さらに人生初という左手でのぶっ壊すポーズも披露するサービスぶりだった。

【大阪・塚本】森友学園前理事長の籠池泰典氏(68)の妻で、大阪5区に立候補した諄子氏(64)はJR塚本駅前で第一声。

 供託金不足で立候補も危ぶまれたが、前日になんとかクリア。それでも選挙資金は潤沢とはいえず、選挙カーは軽乗用車1台でハンドルは泰典氏が握る。家族がチラシ配りをしている姿も見られ、手作り感あふれる姿に「理想の夫婦像」との声も上がる。

 諄子氏といえば毒舌やぶっちゃけトークが持ち味で、この日の街頭演説では、公明党や司法批判に終始し、ピー音が入るようなことはなかったが、いつ爆弾発言が飛び出してもおかしくない状況とあって、報道陣は冷や冷やものだ。

【大阪・あべの】大阪1区からの立候補を断念し、比例近畿ブロックに回ったれいわ新選組の八幡愛氏は(34)は、昨年11月に立候補を表明したあべのキューズモール前で第一声を上げた。

 八幡氏は現役大学生のタレントで、選挙前は野党統一候補になれば小選挙区の勝ち上がり予想もあったが、野党共闘のために比例単独になり、当選の道は厳しくなってしまった。ただ、自称「あきらめの悪い女」はけなげに訴える姿に同情が集まっている。

 演説では、大阪で圧倒的な支持を誇る日本維新の会を「ただの補完勢力」「自民党よりもキツイ新自由主義」とバッサリ。これには昨年の大阪都構想の住民投票で維新を斬りまくった同党の山本太郎代表をほうふつとさせ、〝女・太郎〟と評価はうなぎ上りで、ブレークの気配が漂っている。

【沖縄・宜野湾】掲示板に張られたポスターで、報道陣や有権者を驚かせたのはNHK党公認で立候補している中村幸也氏(41)だ。

 中村氏は不登校宣言で、物議を醸している〝少年革命家〟でユーチューバーのゆたぼん(12)の父親。心理カウンセラーとして、息子をサポートし、〝ゆたぼんパパ〟として、ネット上では有名だ。

 ポスターには中村氏とゆたぼんが2ショットで大写しになっている。公職選挙法で未成年者の選挙活動は禁じられていて、過去に立候補者の子供がマイクを握って、問題になったことがある。

 ゆたぼんはポスターだけでなく、政見放送にも出演予定で、事前に選挙管理委員会から問題ないとの許可を得ているという。ゆたぼんは投票を呼び掛けるワケではなく、不登校問題を訴える少年という位置づけのようだが、そのインパクトは絶大だ。