新型コロナウイルス感染者の病床確保対策として、大阪府が臨時の大規模医療施設、いわゆる“野戦病院”の整備を推し進めているが、効果が疑問視されている。

 この施設は大阪大学医学部付属病院の忽那賢志教授が監修し、大阪市のインテックス大阪に1000床規模の受け入れを目指すもの。200人の中等症患者と軽症・無症状者を対象とする。共同企業体が事業者として選定され、今月30日からの運用開始に向け準備が進んでいる。大阪府は、11月までの運営費など約32億円の補正予算を議会の議決を経ない専決処分にすることを決めた。

 また日本維新の会の片山虎之助共同代表と馬場伸幸幹事長は、15日に菅義偉首相と官邸で面会。同施設の整備に支援を求め、菅首相は「最大限協力する」と述べた。

 大急ぎで体制を構築しているが、大阪府の吉村洋文知事は16日の定例会見で「ホテルや入院施設があぶれるようになった時の補完的な施設として使うのが目的。災害級の感染爆発が起きた時に運用する」と話すなど、しばらくは患者を受け入れる見通しはない。さらに「10月の頭に陽性者が入る可能性は極めて低いが、いつでも動かせる体制はつくっておく」とも話した。

 大阪府の関係者は「単にベッドが置いてある避難所というのが実態」と声をひそめる。

「『オンライン診療ができます』なんて言ってますが、医師の常駐すら困難。中等症のベッド200を運用できる医者なんていません。結局、軽症もしくは無症状者が汚い大部屋で寝てるだけで、ホテルの宿泊療養の方がはるかにマシ。シャワーしかない大部屋なんて泊まりたくないでしょ?」

 こんな中身でもさまざまな調整が必要になる。同関係者は「多くの職員が知事の思い付きに振り回され過労状態になっており、“愚策”ともささやかれています」。

 吉村氏は運用について「走りながら考える」と話していたが、現場は追いついていない様子。病床確保は急務だが、「つくりましたよ」だけに終わってはいけない。