中国の衛生当局は4日、新型コロナウイルスの中国本土での市中感染が、国内に31ある省・自治区・直轄市のうち17に広がっていると明らかにした。全国的流行の兆しがあり、各地の地方政府が警戒を強めている。

 感染者が多いのは江蘇、湖南、湖北の各省など。北京市や上海市も感染者が出ている。7月後半から江蘇省南京市で感染者が増え、旅行者などを通じて各地に広がったとみられている。デルタ株も確認されている。

 3日に判明した新たな市中感染者は無症状者も含めて86人。新規感染者が1万4000人を超えた日本に比べ少ないが、厳しい対策を続けてきた中国としては高水準だ。

 中国はこれまでコロナの封じ込めに成功したことをアピールしてきたが、感染力の強いデルタ株の拡大は深刻だ。中国メディアによると、武漢市では2日に7人の感染が判明したという。翌3日、武漢市政府は約1200万人の市民全員にPCR検査を実施することを発表し、湖北省政府は感染拡大を食い止めるため市民に対し「戦時状態突入同様の備え」を行うよう発表した。日々、感染者数の記録を更新し続ける日本とは大違いだ。

 中国人ジャーナリストの周来友氏はこう語る。

「たった7人で、湖北省と武漢市の政府がここまで厳しい措置を取る背景には、“武漢は新型コロナの発生地”というイメージが世界についてしまったことがあるでしょう。武漢を二度とコロナの感染拡大の地にしないという強い決意があるのです」

 武漢市内ではすでに市民生活に大きな影響が出ているようだ。

 周氏は「武漢市内のスーパーではすでに食料品の買い占めが始まっています。昨年1月、物流の滞りなどから食料品価格が高騰し、白菜が1000円など深刻な物価上昇が起こったからです。さらに当時、コロナに便乗し、故意に価格を釣り上げ、食料品を通常の数倍の価格で販売するスーパーが出現したから、市民が敏感に反応しているんです」と話している。