人気ロックバンド「DIR EN GREY(ディルアングレイ)」のボーカルの京をかたり、内縁の妻だった女性の父親(61)から、計約5400万円をだまし取った詐欺容疑で、奈良県王寺町の無職、笠原善和容疑者(39)が逮捕されたが、この“ビジュアル系詐欺”が成立する理由もあるという。

 同容疑者は2017年10月から今年7月ごろまで、自らを京と偽り「所属事務所のオーナーに通帳を取り上げられて金がなくなったので、金を貸してほしい」などとウソをついて、142回にわたり計5397万5000円をだまし取っていた。

 笠原容疑者は京と同じようなタトゥーを女性や父親に見せて信じ込ませていたというが、この“ビジュアル系詐欺”が成り立ちやすい理由の一つに挙げられるのが、濃いメークだ。素顔とのギャップがかなりあるために本人との判別が困難。

「写真週刊誌がビジュアル系ミュージシャンの密会と思われる写真を撮った際に、親しい編集者から鑑定を相談されることもありますが、面識あるミュージシャンでも、オフの密会写真だと本人かどうか分からなかったりもします。家族や事務所の人でないと判別できないようなビジュアル系ミュージシャンは多いでしょう。だから、ビジュアル系ミュージシャン詐欺はやりやすいかもしれません」と音楽ライター。

 また、アーティストのプライベートが謎に包まれていることも、利用される理由の一つだろう。詐欺ジャーナリストの野島茂朗氏は「ファンがアーティストに恋愛感情を抱いて売り上げに貢献してくれるというビジネススキーム上、住まい、家族などを隠しているケースが大半。情報が出ていない分、詐欺師も話を作りやすいし、だまされる側も秘密保持してくれるので、相談もできず、だまされたことに気づかない」と指摘する。