オカルト扱いされてきた新型コロナウイルスの“人工ウイルス説”がにわかに現実味を帯びてきた。HIV(ヒト免疫不全ウイルス=通称エイズウイルス)を発見し、2008年にノーベル医学生理学賞を受賞したフランスのリュック・モンタニエ博士が新型コロナについて「武漢研究所から漏洩した“人工ウイルス”だ」と明言したからだ。事実ならば、中国責任論は一段と過熱。平和な日常を壊された世界中の憎悪が中国に注ぐことになる。“アフターコロナ”の世界を占う――。

 昨年末に中国・武漢市で発生したとされる新型コロナウイルス。当初、海鮮市場で売られていたコウモリ由来と伝えられたが、一部でくすぶっていた、市場から12キロほどにある中国科学院武漢ウイルス研究所から誤って流出したという話が、ここにきて急速に広まっている。それも人工的に作り出されたウイルスだという。

 この手の話は陰謀論としてオカルト扱いされ、世間一般ではフェイクニュースにされがちだ。実際、中国当局は「バカげた話だ」と一蹴。2月には世界の科学者27人が英医学誌ランセットで、新型コロナは自然界に起源があるとする共同声明を発表している。

 風向きが変わったのは、最近になってドナルド・トランプ米大統領がウイルスの起源について徹底調査を命じたこと。現在、米国の感染者数は約74万人、死者は4万人超(19日時点)と、流行の中心地となっている。トランプ氏は明言こそ避けたが、新型コロナが発生した昨年末に市場で「コウモリは売られていなかった」と述べ、本格的調査に乗り出した。感染者約11万人、死者約2万人が出たフランスのマクロン大統領も「中国は何かを隠している」とにおわせている。

 そんな中、HIVウイルスを発見し、ノーベル賞を受賞したモンタニエ博士が「新型コロナウイルスは中国・武漢にあるウイルス研究所から事故的に漏洩した。これは人工操作されたウイルスだ」と発言したことがフランスなどで報じられ、拡散した。「新型コロナウイルスの中にエイズウイルスが含まれている」との衝撃的な指摘もみられる。

 モンタニエ博士とタッグを組んだ数学者ジャン・クロード・ペレズ氏も「これは時計職人が行うような精密なもので、自然に存在することはあり得ない」としている。

 モンタニエ博士いわく、自分たちより先にインドの科学者が同様の研究を発表したが、何らかの強い圧力が働き、却下されたという。博士は「自分はもう高齢(87歳)だし、圧力など怖くない。真実は必ず明らかになる」と語った。

 米メディアによると、武漢ウイルス研究所で働く研究生が誤って感染し、広めた可能性があるという。もしそうなら、この研究生がすべての始まりである「感染0号」となる。

 米国では新型コロナを「人工ウイルス」と考える人は国民の7割以上にのぼる。それをウイルス研究の権威が肯定した形だから、中国責任論は一層過熱するはずだ。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「人工ウイルスなら、とんでもない話。それを習近平が隠蔽しようとした結果、世界中で何十万人の人が亡くなっている。大犯罪ですよ! 各国一致団結して習近平を国際司法の場に引きずり出して、大量殺人の罪で裁かなければならない。全世界の経済損失もすべて中国が負わなければならない」と力説する。

 新型コロナのせいで、世界中で“普通の生活”は一変。それが自然発生ではなく、武漢ウイルス研究所の不手際が原因なら、人々の憎悪は中国に向かうことになる。

「中国は孤立化する。“世界の工場”と言われているが、いまや“世界のウイルス”そのもの。企業は生産拠点を他国に移すべきだし、中国製品の不買運動があちこちで起こるはずだ。経済が低迷したら中国という国は終わる。やりたい放題やってきたツケを払う必要がある」(同氏)

 日本もいずれ大きな選択を迫られる。石平氏は「日中関係は良好かもしれないが、ここで中国の肩を持てば、世界中から戦犯国扱いされるよ」と警鐘を鳴らす。

 新型コロナが終息しても、平和な世の中とはいかなそうだ。