世界的に有名なギタリスト、マーティ・フリードマンが、平成生まれのアイドルと昭和の歌を語る連載。昭和歌謡好きで知られるBEYOOOOONDSの島倉りか(20)から勧められる故大滝詠一さんの曲に、今回もマーティがどハマり!

【大滝詠一論3】

 ――この対談でマーティさんは大滝詠一さんの曲を初めて聴き、ファンになったようです。島倉さん、マーティさんをさらに引き込む、トドメの一曲を!

 島倉 ラッツ&スターさんや多くの方がカバーされている「夢で逢えたら」(ラッツは1996年)も好きですし、薬師丸ひろ子さんが歌われた「すこしだけやさしく」(83年)も好きだけど、やっぱりご本人が歌っている「A面で恋をして」(81年)ですね(スマホから再生)。

 マーティ(イントロを聴きながら)フィル・スペクターだね、やっぱり。パーカッションがたまらないですよ。この「タン・タタン・トン」というビートは「ビー・マイ・ベイビー」(ザ・ロネッツ、63年)から。ビートの数もコード進行もフィル・スペクターだね。(歌が入ってから)コーラスが素晴らしいです。豪華ですね。

 島倉 確かに、いろんな声が入ってますね。

 ――ナイアガラ・トライアングル2の曲だから、大滝さんと佐野元春&杉真理さんの声ですね

 マーティ(間奏が始まって)この間奏もフィル・スペクター…。なにこれ、大好きですよ! 初めて聴いたんですけど。どれに入ってるんですか?

 島倉 ピンク色で中心に三角形が描かれたジャケットの「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」です。

 マーティ ボーカル、バッキングボーカルがとても美しくてすてきです。世界観がおいしいよ! でも、ちょっと待ってください…(スマホの曲を探す)。ありました。心の準備、できてますか?(曲を再生)。

 島倉 え? あれ!? ほぼ同じ!? アハハ。

 マーティ バディ・ホリーの「エヴリデイ」(57年)です。この曲のモチーフだね。さらにこの曲をフィル・スペクターのマネしてカバーした人がいるんですよ。(スマホの曲を探す)これは豪華バージョン。大滝さんにちょっと近くなります(曲を再生)。

 島倉 へー。この「エヴリデイ」は誰ですか?

 マーティ ブルース&テリーです。60年代中盤の人たちで、この時代が好きな人は大好きですよ。自分の音楽に取り入れたくなります。メンバーのブルース・ジョンストンは、途中からビーチ・ボーイズに加入しました。

 島倉 ビーチ・ボーイズ!? 話がつながりました! 大滝さんが好きだった音楽の輪郭が、すごくよく見えてきますね。おもしろい。

 ――マーティさん、大滝さんの“元ネタ”も好きだったんですね。すっかり“大滝ファン”になったところで、島倉さん、他にオススメ曲はありますか

 島倉 大滝さんがいた「はっぴいえんど」はどうですか。これは歌っているのは大滝さんではないですが、代表曲の「風をあつめて」。71年の曲です(曲を再生)。

 マーティ 50年前の曲ですか。これ、古くさい感じしないですね。現代の曲にぜんぜん属する気がします。最近こういうすかすかのアレンジの曲はやってるじゃないですか。ボーカルがメインで演奏はシンプル。豪華なアレンジじゃない。そういう今の風潮と同じ感じです。

 島倉 そうですね。古く感じません。

 マーティ 古さを感じるのは、レコーディングの音と、楽器の音色ぐらいです。曲はまったく古くない。今の音楽はこういうスタイルを新しくしようとしてるんじゃないですか。

 ――大滝さん編は以上です。島倉さんはマーティさんが聴いたことない曲をオススメし、初めて聴いたマーティさんはファンになった上に、一瞬で曲を解体してルーツを解き明かして示す。過去にない展開でした

 ☆マーティ・フリードマン 米・ワシントン出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍している。「紅蓮花」などをカバーしたアルバム「TOKYO JUKEBOX3」が発売中。伝説の音楽バラエティー「ROCK FUJIYAMA」がユーチューブで復活。

 ☆しまくら・りか 2000年8月20日生まれ。東京都出身。19年にBEYOOOOONDSとしてデビュー。ユニットCHICA#TETSUのメンバー。最新シングルはオリコン初登場1位の「激辛LOVE/Now Now Ningen/こんなハズジャナカッター!」。ハロー!プロジェクト2021春公演は「チーム花」で参加。