ジャーナリストの安田純平氏(46)が本紙インタビューに、いまだ続く自身への誹謗中傷の実情を語った。7日、映画「ある人質 生還までの398日」(19日公開)のトークイベントに登壇した安田氏は、2015年から3年4か月にわたってシリアで武装勢力に拘束され、解放された経験を持つ。当時、高額の身代金を払い解放されたと報道され、多くの非難にさらされた。この映画を通して安田氏が伝えたいことは?

 ――いまだに誹謗中傷は続いているのか

 安田氏 すごいありますよ。(スマホの画面を見せながら)「政府に感謝しろ」とか、「身代金を払わせるようなやつにパスポートなんか出すわけないだろ」って。パスポートは移動の自由を保障しているが、「移動の自由なんて剥奪されて当然のやつ」とか。基本的に非国民扱いってことです。

 ――SNSに届くのか

 安田氏 SNSもそうだしメディアもひどかった。彼らにとっては昔の話かもしれないけど、今まで拘束されたのって全部、軍とか警察で15分とか1時間。(04年に拘束された)イラクの時だって外務省の公文書を見ても相手の要求とか接触もないので(人質ではなく)行方不明の事件になっているんです。そういうのも全部含めて人質事件となって政府に何回も身代金を払わせてるやつとなっている。デマがデマを呼んでる感じです。

 ――パスポートが発給されない

 安田氏 日本政府は、トルコが入国禁止にしてるからって言ってるんですが、(トルコからは)そんなことは言われてないですよ。そういう措置をしている書類を出せと言っても出てこないです。日本政府としては紛争地の取材をさせたくないというのがあって、そのためにやってる話ですよ。

 ――海外でまたジャーナリスト活動をするのか

 安田氏 それはわからないですね。日本にいるといろんなことを言ってくる人がいる。パスポートを申請したのは家族と一緒に海外でゆっくりしようというのがもともとの目的です。

 ――批判についてはどう思うか

 安田氏 批判はいくらしてもらってもいいんですけど、前提となる事実が間違っていたら意味がない。前提事実を明らかにしないと。正当化してるって思うかもしれないけど、デマ(身代金を払って解放された)が広がると日本人を捕まえれば、身代金を取れるって世界中が思っちゃうわけですよ。何でこんな自殺行為をやっているんだって思いますよ。この映画でも解放交渉って、ちゃんと技術があって、ちゃんと確立されていて、ちゃんと
やるもんだっていうところを個人的に見てほしい。

 ――日本のメディアの現状についてどう思うか

 安田氏 やっぱり専門家に聞いてほしい。あと本人にちゃんと取材しないといけない。事実なんてどうでもよくなった社会は誹謗中傷の嵐になってしまう。東スポがこれをどう報じるのか楽しみにしてます(笑い)。