プロ野球は19日から日本シリーズが始まるが、その一方で来季に向けての戦いはすでに始まっている。宮崎で行われているフェニックスリーグには各球団から期待のホープが集結。中日ドラゴンズからは根尾、京田、山本、清水らが参加し、実戦の中で力を磨いている。

 そんな中、宮崎には行かず、名古屋に残って再起に向けて準備を行っているのが、2年目の石川翔投手だ。150キロを超える速球に切れ味抜群のスライダーを武器に、春季キャンプでは一軍に抜てきされた未来のエース候補だが、右ヒジの故障で残念ながら今季の登板機会は0。現在はリハビリの毎日を送っている。

「フェニックスリーグまでに投げられるようになりたいという気持ちが強すぎちゃって…。今はヒジの治療に専念している感じです」。同じ高卒2年目の山本(3勝)、清水(2勝)が次々と一軍で活躍していく中で、右ヒジの故障と闘う日々。同期がナゴヤドームで歓声を浴びる姿に正直、焦りも感じていたという。

 そんな石川にとって心の支えになっている歌がある。「いい歌ですよね。ヤバいです」。それはアイドルグループ・SKE48が歌う「僕は知っている」。2015年に公開されたドキュメンタリー映画「アイドルの涙 DOCUMENTARY OF SKE48」の主題歌で、困難や壁にぶち当たってもひたむきに頑張り続ける人たちに向けた応援ソングである。秋元康総合プロデューサーがSKEに書いた曲の中でも特にファン人気の高い一曲だ。

 もともとAKB48の大ファンで、名古屋に来てからSKE48も好きになったという石川だが「僕は知っている」という歌に心ひかれるのには理由がある。「あの歌を聴くと(リハビリ中の悔しさや頑張りを)『僕は知っている』と言われているような気がして…。すごく気持ちが楽になるんです」

 世はSNS時代。プロスポーツ選手や芸能人は何かとネットの世界で俎上に載せられることが多い。右ヒジの故障で投げられない石川も自分に対する心ない書き込みを目にすることが何度かあったという。だからこそ逆境にくじけず頑張っている人たちへ、温かな視線を送るこの歌に勇気づけられるのだろう。

 先日、中日ドラゴンズの応援ラジオ番組でレギュラーを務める、SKE48の日高優月から関係者を通じて石川にSKEの新曲「FRUSTRATION」のCDが贈られた(ちなみに日高は自腹でCDを購入している)。そこにはメンバーの北川綾巴と後藤楽々からの応援メッセージが添えられていたという。「最高でした。より頑張ろうという気持ちになりましたね。(北川と後藤が)めっちゃ好きだったので」。(ちなみに北川と後藤は9月末にSKEを卒業。石川がいま気になっているメンバーはチームKⅡの大場美奈だという)

 19歳の若者にとって思い切り投げることができないこの状況はかなりタフだと思う。それでも石川は明るく前を向いてリハビリに励んでいる。今は雌伏の時。この経験がいつかナゴヤドームのお立ち台で見せる笑顔につながるはずだ。

(中京編集委員・宮本泰春)