名古屋競輪場で開催された「第62回オールスター競輪」(GI)は18日、最終日を行った。決勝は新田祐大(33)が北日本の絆を武器に、番手まくりで8回目のGⅠ(SSカップみのり含む)制覇を成し遂げた。

 立役者は菅田壱道(33)だった。菅田の昨年来の活躍は目覚ましく、今年はGⅠ優勝を狙う中で、賞金でのグランプリ出場も見えてきていた。そんな菅田に届いた連絡は10月、11月があっ旋しない処置になる…という厳しい現実だった。

「聞いた時は心が折れそうになった。今年は1月と4月にすでにあっ旋しない処置を受けていて、6月の高松宮記念杯の失格で10月があっ旋しない処置になる、と。それで、年間3回のあっ旋しない処置を受けた場合には、1か月あっ旋しない処置になる、という規定があるとのことで11月も…」

 このオールスターが事実上、GP出場へのラストチャンスとなり「優勝だけを狙う」と開催前から意気込んでいた。だが決勝のメンバーが出揃うと、「北の先頭で」というコメントを出した。

 2016年8月の松戸オールスターで菅田は新田の後ろを回った。「そのことがずっと引っかかっていた」。どこかで、そのモヤモヤを吹き飛ばしたい。また「新田さん、(渡辺)一成さん、慎太郎さんには迷惑ばかりかけていた」ので、やることはひとつだった。

 見事にレースの主導権を握り、新田が平原康多(37)と激しくぶつかり合うのを後ろで見つめていた。1着でゴールした新田は菅田を待ち、ねぎらってくれた。

「脚がいっぱいで新田さんのところまで追いつかないと思ったけど、待っていてくれました。涙が止まりませんでしたね」

 そして思いがけない言葉が、平原からかかった。「おめでとう」――。菅田は「オレに、おめでとう、と言ってくれて…。えっ…と。ラインの勝利として、オレに言ってくれたんだ」と平原の深い言葉に全身が燃えた。これが、競輪――。

 菅田は9月13~16日に松阪競輪場で開催される共同通信社杯(GⅡ)に出走する。今年の賞金でのGP出場は厳しい状況だが、「今日で競輪は終わりじゃない」の言葉が、来年以降に響く。いや、もしかすると今年――。

☆前田睦生(まえだ・むつお) 九州男児。ヘアスタイルは丸刈り、衣装は吊るしのスーツで全国各地の競輪場の検車場を闊歩している。日頃の不摂生を休日の多摩川土手ランニングでなんとかしようとしている姿の目撃情報多数。