日本語、英語、フランス語を追いかける…猫語の達人!
プロフィール
町田忠
執行役員専門委員。競馬記者10年を経て校閲担当25年超。文字と言葉の魅力に取りつかれて言葉の世界をふわりふわりと旅し続けている。仕事を離れると、猫写真家に変貌し日夜のら猫を追いかけ回す、のら猫と文学とビートルズ愛好者。
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意味が増えようとしている言葉
2012年07月19日

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7月19日(木)

 

 先日、言葉の意味が増えている最中として、「空車」を挙げた。本来はタクシーや営業者が客や荷物を乗せていない状態を空車と言っていたはず。それが、最近では駐車場の空きが空車と呼ばれ、ほぼ常識化してしまっている。それはおかしいなどと言っても始まらない状態なのだ。だから空車にはそういう意味もあると自分も思い込まねばならない。近い将来どの辞書を見ても空車の項に2つの意味が記されるのはほぼ間違いない情勢だ。

 

◆帯同

 似たような状態にあるのが「帯同」かもしれない。帯同は本来は他動詞で「~を一緒に連れていく」という意味だ。

 本日の東スポ5面、「沢は肩モミにハマってます」というタイトルがついた記事に「トレーナーを五輪に帯同するとともに」と書いてある。なでしこジャパンの沢は頭の血行をよくするために肩周辺のマッサージをしているのだとか。そのために所属球団のトレーナーを帯同して熱心にもみ続けているのだそうだが、これはまさに正しい「帯同」の使い方。沢がトレーナーを連れて行く、という意味だ。

 しかし、実際にどう使われているか気をつけて見ていると、「ついていく」という自動詞として使われているのを結構見かける。「(私は)来週の北海道遠征に帯同する予定(北海道遠征に自分も合流する、の意)」という文章で、主語となる人が一緒についていく、というのは誤用だ。どうもスポーツ界で「ついていく」という意味で使われる誤用が目立つ。どこで誰が使っているのかまでは分からないが、つられてメディアの記者が平気で使うようになりつつあり、しかもそれが言葉を換えようがないような文脈で使われているから、校閲もお手上げで渋々見逃し…なんてことになっている。このごろは読む方も慣れてしまって、誤用が誤用ではなくなりつつある状態だ。

 ひょっとすると、この「帯同」の自動詞用法も辞書に載るなんてことがそう遠い先のことではないかもしれない。

 

◆あわや、ジンクス

 野球で外野への大飛球に対し「あわやホームラン!」とは誰の気持ちを言った言葉でしょうか? あわや、と言うのだから、これはフェンスを越えなかったことになるが、打者なのか投手なのか?それが問題だ。打った打者がそう思ったと書くならそれは「あわや」の誤用。あわやとは、危険が寸前で回避されたさま。危うく~しそうだった、という意味だ。だから投手にとってはあわやだが、打者には「惜しくも」という状態であり「あわや」は誤用となる。

 ジンクスも本来は悪いことに使われる。英語jinx(ジンクス)から来ている。英語では悪い意味でしか使われない。いい意味で使うのは間違いなのだ。「2年目のジンクス」などとよく言われる。新人賞を取った翌年は成績が激しく落ち込む、などと言う時に使う。赤いシャツを着ていくと馬券が取れるジンクスがある、などと言うのは本来は誤り。

 しかし、その「あわや」と「ジンクス」。逆の意味でも普通に使われていて、よほどのことがない限り誤解を招くこともない。やがて、どちらでもよい、という日が来るのだろうか。

 

◆役不足

 以上のように、本来はそういう意味ではない、という使い方が一般に多用されているものが結構あるが、「役不足」ほど誤用が多いものはない。誤用界のチャンピオンだ。

 ・石田三成の役ではAには役不足だ

 この文中では「Aには荷が重い」という意味で言っているのが一般的。力不足、大役過ぎるというわけだ。

 しかし、実はそれは正反対。Aにとって役が不足している、というのが本来の「役不足」の意味になるのだ。もっと大役はないのか、と問うていることになる。

 この誤用、実に多い。ほとんど誰にも誤解されずにごく普通に「Aには役が重すぎる」という意味で通じてしまう。だが、「誤りやすい慣用句」などのマニュアルを読むと、まず間違いなく出てくるし、辞書・辞典などでも誤用の注意書きが必ずといっていいほど出ている。文化庁の調査などでも、間違った使い方をしているほうがパーセンテージが多いという結果が出たこともある。

 しかし、いくら逆の意味で使われているほうが多いといっても、正反対の意味ではどちらでもいいとはいえない。新聞業界では誤用をシャットアウトしているが、一般的に正しく使ってもらえる日が来るのかどうか。近い将来とはいえないようだ。



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