今季、8年ぶりのBクラスに転落したソフトバンク。選手会長・中村晃外野手(32)は敗北のシーズンをどう受け止めたのか。

 秋季キャンプが行われていた宮崎で本人を直撃した際、その表情は終始くもっていた。今季は自身4年ぶりとなる一軍完走。139試合に出場して、打率2割4分5厘、8本塁打、56打点。〝レフティースナイパー〟の異名を取る巧打者にとって、不完全燃焼のシーズンだった。

「1週間6試合ある中で、最初の2試合は良い感じでも3戦目以降それが続かなかった。体力的にも、もう一度鍛え直さないといけないと思わされた」。すでにシーズン終盤から「量」にこだわったトレーニングを始めており、オフの自主トレにも熱が入る。

 選手会長就任1年目の昨季は、リーグ優勝と4年連続日本一を達成。今季の結果はそこからの落差も大きかっただけに、個人の成績よりも心に引っかかるものがあった。全試合一軍に身を置いていたにもかかわらず、低迷に歯止めをかけられないばかりか、ベンチの空気を変えられなかった自責の念がにじんだ。

「この世界にいて、いろんな人と接して、いろんな意見も聞く。その中で〝自分を持ってやる〟ってことが大変だなって感じた。負けが込むと流されてしまう…。それをしちゃいけないと感じたシーズンでした。正しいと思うことは正しいと思ってやっていきたい。勝っていると帳消しになってしまうこともある。改めて初心に返れた気がします」。ベンチで〝敗者の空気〟を味わい、常勝の真理を見つめ直した。

 今季限りで尊敬する長谷川(一軍打撃コーチ)が現役引退。〝いるだけ〟で場の空気を引き締められる稀有な存在が身を引いたことも、中村晃の自覚を芽生えさせている。「自分はあまり言わないタイプですが、我慢できない時はチームメートにもちゃんと伝えたいと思います」。

 なぜ勝てなかったのか。終戦から1か月、常勝を支えてきた男たちは、それぞれの視点で〝検証〟を済ませている。もう一度勝ち続けるために、背中で見せて、ダメなら耳の痛いこともはっきり言う――。これまで以上に、威厳ある〝嫌われ役〟を買って出るつもりだ。