ついにトンネルから抜け出した。3位巨人は12日の広島戦(マツダ)に2―1で競り勝ち、連敗を6で止めた。立役者は801日ぶりの今季1号を放った小林誠司捕手(32)とバッテリーを組んだ菅野智之投手(31)だ。中4日のフル稼働で7回1失点の粘投で4勝目(6敗)をマーク。ただ、5人の先発陣で回し続けた疲労は蓄積し、ファームでくすぶり続けるあのFA右腕へ失望感が渦巻いている。

 打のヒーローは〝伏兵〟の一発だった。1―1の7回に小林が2019年7月4日以来となる決勝ソロ。そんな接戦をモノにできたのも、菅野の踏ん張りがあったからこそだろう。前半戦は大ブレーキとなったが、チームの窮地を中4日の先発で救い「みんなそうですよ。やっぱり疲れていますし、厳しい戦いが続いているんで。どれだけ腹をくくって自分の仕事に力を発揮できるかだと思います」と力を込めた。

 遠かった1勝を手にした原監督も「本来の智之に戻りつつある。打撃においてもピッチャーにしても、いろんな形で呼び水にしてもらいたい。しなければいけませんね。チームとして」とひと息ついた。

 とはいえ、首位阪神との直接対決を控えた前週から先発陣はフル回転。勝負どころの6連戦でコマ不足に陥り菅野、山口、戸郷、高橋、メルセデスの5人が中5日で回り、前週の6戦目はメルセデス、この日は菅野が中4日で登板した。首脳陣が信頼を置く投手を投入した形だが、二軍投手陣の惨状も追い打ちをかけた。

 宮本投手チーフコーチも「ファームの方を見ても非常に厳しい」と嘆いていたが、後半戦未登板のサンチェスはコンディション不良で離脱中。中でもチームのピンチで一度も招へいされないのが井納翔一投手(35)だ。

 原監督もFA加入した当初は「先発ローテーションの一角として中5日、中6日、時には中4日で回ってもらいたい」と大きな期待を寄せたが、まったくの鳴かず飛ばず。開幕直前に不注意で頭部裂傷のケガを負い、開幕5戦目の巨人デビュー戦は2回途中4失点KO。即二軍落ちとなり、リリーフでも結果を残せず5月20日からファーム暮らしが続く。その二軍でも8月29日に2回4失点で降板し、阿部二軍監督も「先発が試合をぶっ壊した」とピリリ。その日以降は救援で4試合に登板し、この日まで2戦連続で無失点投球としたが、一軍の戦力になれない右腕にもどかしさも募る。

 さすがに球団関係者からも「たとえ前半戦がダメだったとしても、チームが苦しい時こそ力になってもらわないと。入団した時は『どうせダメだろう』みたいなことを言われまくったけど、その通りになってどうするんだ」「メンタルが弱すぎる。二軍で何をやっているんだと言われても仕方がない」とため息がもれる。

 泣いても笑っても残り32試合。首位阪神とは3ゲーム差だ。やりくり上手の指揮官に手札が一枚でも多いに越したことはないが、果たして――。