【赤ペン!!特別編】DeNAのアレックス・ラミレス監督が24日の広島戦終了後、夜6時15分から退任記者会見に臨んだ。横浜スタジアムのカフェ・レストランで、最初に三原一晃球団代表が退任に至った経緯をこう説明した。

「昨日の夜、優勝の可能性がゼロになったことを受けて、ラミレス監督から監督の職を今年で終わりにしたいという話がありました。そこで私が(南場)オーナー、(岡村)社長と(電話で)連絡を取り、これを受け入れる運びになりました」

 続いてラミレス監督がマイクに向かい「素晴らしいシーズンを送ることができました」と、こう切り出した。

「今年は数字を見ればわかるように、チーム打率はリーグトップで12球団でも一番です。(佐野と梶谷が)チームメート同士で首位打者を争っているのも素晴らしい。チームの本塁打数も昨日まではジャイアンツと並んでいた。チーム防御率もいい数字でしょう。みんな、優勝を目指して頑張ってきたんです。しかし、残念ながら、優勝するという夢はきのうの段階でかなえられなくなった。みんなが頑張ってくれたにもかかわらず、こういう結果になった責任は自分が取らなければならない。そういう思いを、三原さんに伝えました」

 今後については何も考えていないという。

「まず自分の妻に相談して、彼女にどんなプランがあるのか聞いてみたい。(監督を辞めたら)時間はあるから、家族とたくさんの時間を過ごすつもりだよ」

 将来的に再度DeNAおよび他球団のユニホームを着るつもりがあるのかという質問には「今はまだ2位を目指し、DeNAのユニホームを着て戦っているから、そういうことは考えられない。将来、話が来れば、その時に聞いて考えますよ」

 一方、三原代表は「別の役職で球団に残ってほしい」と話している。

「これで縁が切れるというのではなく、何かしらのポジションを用意して、組織の中に残っていただきたいと思います」

 三原代表が言うように、ラミレス監督が残した実績は十分評価されていい。

 2016年、中畑清前監督の後を受けて監督に就任すると、11年ぶりの3位に躍進して球団初のCS進出。翌17年も3位で16年ぶりに2年連続Aクラス入りを果たした。

 さらにCSでもリーグ2連覇の広島を下し、日本一を達成した1998年以来19年ぶりに日本シリーズまで駒を進めている。2勝4敗で敗れたとはいえ、相手がソフトバンクなのだから、むしろ善戦したほうだろう。

 ラミレス監督はこう振り返っている。

「僕が監督になった1年目は、もうベイスターズはだいぶ力をつけていたんだけど、まだスタンドは相手チームのファンのほうが多かった。それが年々増えていって、今ではベイスターズのファンがたくさん来るようになっている。横浜は素晴らしい都市で、この街のファンは日本一ですよ」

 18年はラミレス監督3年目で初めて4位とBクラスに沈んだが、19年は再び2位に浮上。序盤の10連敗をはね返し、首位巨人に0・5ゲーム差に肉迫した手腕を南場智子オーナーに評価され、今年も単年契約での続投が決まった。

 しかし、一部評論家に優勝候補と言われた今季は、ここまで50勝53敗5分で4位に低迷。ラミレス監督が節目の試合で断行した奇策が敗因と指摘された。

 それでも「自分の決断に一切悔いはない」とラミレス監督は言った。

「僕のスタイルは80%がデータや数字、フィーリングが20%。そういう自分が信じるやり方で決断してきた。そこに後悔することは一切ない。今季は、巨人以外のチームにはいい成績を残している。結果的に巨人に差をつけられたのは(8勝12敗と)直接対決で勝てなかったからです」

 だからか、その巨人に勝った試合は今でも印象に残っている、とラミレス監督は強調する。

「先週(10月16、18日)、この横浜で巨人に勝った試合は良かった。今季の中でもいい試合だったが、5年間の監督生活の中でも素晴らしい試合に入るでしょうね」

 自分が育てた選手の中では、やはり今年4番に抜てきした佐野への思いが強いことを吐露。

「去年まではバックアップ(控え)だった佐野をキャプテンと4番にして、あれだけの成績を残してくれた。もしかしたら、僕は間違った決断をしたのかもしれないよ。でも、佐野が自分の力で結果を出してくれたんだ。宮﨑も最初はバックアップだったし、倉本もそうだった。三嶋もシーズン途中からクローザーという難しい役割をよく務めてくれたと思う。みんなよくやってくれた。しっかり頑張ってくれたと思います」

 来年は、そのラミレス・チルドレンを、二軍監督から昇格する三浦大輔が引き継ぐ。これについて三原代表は「まだシーズン中なので来季の人事については回答を控えさせていただきます」と明言せず。「しかるべきタイミングが来たら」と早期の発表をにおわせている。

 ラミレス監督は打線を強化したが、投手起用には疑問符もつきまとった。三浦新監督が投手陣をどう立て直すのか、これが来季のDeNAの成否を握る。(赤坂英一)


☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。