これからもぜひご指導ください――。巨人は23日の阪神戦(東京ドーム)に5―4で勝利。マジックを5としリーグ2連覇もいよいよ秒読みに入った。そんななか、この日、引退会見を開いた日米170勝右腕・岩隈久志投手(39)に現場からコーチ就任を熱望する声が上がっている。

 最大4点あったリードを9回に1点差まで迫られ、なおも一死一、二塁のピンチ。ベンチは守護神デラロサから5連投の左腕・田口にスイッチすると何とか逃げ切り2連勝を飾った。マジック5にも原監督は「そうですね。3くらいになったら意識しましょう」と冷静だった。

 V2に向け一直線の巨人だが、来季に向けた動きも加速。この日の阪神戦前、東京ドーム内では岩隈の引退会見が行われた。指揮官は花束を持って駆け付け「21年間ご苦労様でした」と09年WBCで世界一に貢献した右腕をねぎらった。

 近鉄、楽天、米大リーグ・マリナーズで活躍した右腕だが、巨人での2年間はケガの影響により一軍登板はなし。岩隈は「このユニホームでもうひと花咲かせようと戦ってきましたが、残念ながら一軍での登板は果たせませんでした。素晴らしいチームメートと出会い、たくさんコミュニケーションも取りながら最後の最後まで挑戦させていただいたことに心から感謝しています」と振り返った。

 マリナーズ時代の15年には日本人2人目のノーヒッターとなったレジェンドに、現場からは〝残留エール〟が起こっている。「日米の第一線で活躍した彼の経験は何物にも代えがたいものがある。ファームでは若手にも積極的に教えていたし、ぜひ引き続きやってもらいたい」と球団スタッフはファーム巡回投手コーチやリハビリ担当コーチなどのポストで指導継続を熱望した。

 実際、一軍ローテを担う畠に緩急を使った投球を勧めるなど〝岩隈塾〟は着実に成果を上げている。この日、4勝目を挙げた左腕・今村も「岩隈さんにフォーク(の投げ方を)を聞いたのが印象的」と振り返った。

 その指導は技術論に留まらない。中堅投手の一人は「投球技術はもちろんですがそれだけではなく、私生活のことでも岩隈さんには相談に乗っていただきました。ぜひ残ってほしい」と証言。リハビリ生活で精神がくじけそうな時、岩隈の経験に基づいたアドバイスが心の支えになったという。

 原監督も「この2年間、ファームで若い選手、あるいはコーチの人たちも含め、懸命にリハビリ、あるいは立て直すという(岩隈の)姿はジャイアンツの若い選手の手本になった。大きな財産を作ってくれた」と右腕の姿勢を評価する。

 今後について岩隈は「今の時点では何も決まってない。ひとまずゆっくりしたいなという部分はありますし…」と未定とした。その一方で「いずれは野球の伝道師であるような存在でもいたいなとは思ってます。自分も惜しみなく後輩のアドバイスをさせてもらったので、僕自身もすごく貴重な経験にもなりましたし、財産にもなった」と指導者への興味も示した。

 球団も右腕のこれまでの功績を称え、11月7日ヤクルト戦(東京ドーム)で引退セレモニーを行うことを発表した。果たして現場の声はレジェンドに届くのか。