背広組の努力も報われた1勝だ――。巨人が14日の広島戦(東京ドーム)に6―1で勝利し、6年ぶりとなる対広島の勝ち越しを決めた。優勝マジックも9となったが、そこには球団による2016年からリーグ3連覇を果たした広島の「徹底解析」と「戦力逆転」を両輪とする長期にわたるオペレーションがあった。

 左ヒジ痛から復活した2年目左腕・高橋が5回2安打1失点の好投。救援陣が無失点リレーを見せると、湿りがちだったG打線も10安打6得点と効率よく得点し連敗を3で止めた。

 これで広島戦は12勝7敗1分けとなり、14年以来6年ぶりの勝ち越しが決定。指揮官は「あ、そうですか。それは、いいですね。はい。それが目標ではないから」と軽く受け流すと、マジック9にも「順調にきてはいると思います。しかし、まだまだ。まだですね」と一切、油断はなかった。

 それでも、コーチやナインら現場にとって5年連続で負け越した「打倒カープ」は悲願だった。元木ヘッドコーチも今年1月に「広島の投手陣にどう向かっていくか。勝敗できっちりと数字が出ているわけだから、カープ投手陣を打ち崩さないと」と今季の大きな目標に掲げていた。

 同じように悔しさを感じていたのが背広組だった。一方的にやられながら、ただ手をこまねいていたわけではない。「広島に追いつき追い越せ」と長い期間、水面下で動き続けてきた。

 その1つ「徹底分析」だ。球団はリーグ3連覇を成し遂げた広島の強さを研究。試合でのスコアラーによる各選手の情報収集は当然として、フロントの一人によれば「誰がどういうやり方で投手陣を整備したのか」とカープ流投手マネジメントに着目したという。

 その結果、当時のコイ投手陣のトップ・畝龍実一軍投手コーチ(現三軍統括)を高く評価。ジョンソン、野村、大瀬良、薮田、岡田ら2桁勝利投手を数多く生み出し、一岡、ジャクソン、今村、中崎ら盤石の救援陣を整備したノウハウの自軍へのフィードバックを試みた。

 もう1つの動きは、主力選手と広島の頭脳の獲得による「戦力逆転」だ。18年オフに「タナキクマル」のコアだった丸をFAで獲得。盤石だった赤ヘル打線に大きなクサビを打ち込んだ。

 さらに、長年にわたり狙っていた「頭脳」を獲得。19年オフに17年まで広島の打撃コーチを務めた石井琢朗氏を野手総合コーチとしてヤクルトから招聘した。その圧倒的な打撃力と機動力で「逆転のカープ」と呼ばれた攻撃メソッドを直接、巨人に注入した。

 もちろん一朝一夕に結果は出ない。時間をかけた入念な分析と的確な補強の積み重ねに、指揮官の采配が加わって初めて〝カープ超え〟が実現。この日も丸が4打数2安打2打点の活躍を見せ、チームの勝利に貢献したのは象徴的だった。

 昨季5年ぶりのリーグ優勝を果たした巨人の負け越しは、広島と交流戦のソフトバンクの2チームだけだった。まずは1つの目標をクリアした巨人が完全優勝でのリーグV2を決めたうえで、日本一を目指す。