ソフトバンクの主砲・柳田悠岐外野手(31)が11日のオリックス戦(ペイペイドーム)で3安打2本塁打5打点の大活躍。グラウンドでのパフォーマンスだけでなく、失策を重ねた後輩を救った「人間力」も注目を集めている。

 この試合「8番二塁」で先発した高卒5年目の川瀬晃内野手(22)が、5回の守りで2つのエラーを記録。5―0の展開から、結果的に一挙6点を奪われ一時逆転を許す一因となった。

 重苦しい雰囲気を振り払ったのが、柳田が6回に放った14号逆転3ランだった。「晃(ひかる)にまた明日から気持ちよくプレーしてもらいたかった。なんとかしたい…ただ、それだけを考えていました。技術的なことは分かりません。気持ちだけで打ちました」

 さらに続けて「(川瀬に)『お前は悪くない。千賀が悪いんだ』と言いました」とファンの前で後輩をフォローした。公私で仲が良く、互いを認め合う関係である千賀には「エースと言われているのなら、あそこはやっぱり…。チームのみんなが思っているんじゃないですか」と〝喝〟を入れ、叱咤激励した。

 プロ10年目。プレーだけでなく、精神的な部分で存在の大きさを感じている野球ファンも多いだろう。そんな柳田には、決して忘れられない出来事がある。今回見せた「仏の顔」と「鬼の顔」には、入団1年目の〝新聞ぐちゃぐちゃ事件〟の影響が多分にある。

 プロ初スタメンを飾った2011年6月25日の日本ハム戦。柳田は変則左腕・武田勝(現日本ハム投手コーチ)の前に3打数無安打2三振に封じられ、チームは敗れた。

「ボテボテのキャッチャーゴロを打ったり散々の内容でした。それで翌日の新聞で(自分の)ガッカリした写真が大きく載った。そしたら、その新聞を先輩の森本学さん(内野手=同年限りで引退)が僕を気遣って『若いヤツを叩くなよ。叩かれるのは上の人間や!』って怒って、目の前でぐっちゃぐちゃにしたんすよ」

 その強烈な思い出があるゆえに「これからは自分がそういうのを背負う立場。だから、若い選手には勝敗とか失敗を気にせず思い切ってプレーしてほしいんです」と〝盾〟になることを誓った。結果に対する反省は大事だが、勝敗の責任を背負い込むと萎縮する。あの時、自身が救われたように、若手の成長を促したいという思いが根底にある。

 さらに、チームが負けた時も「本当は活躍して(メディアに)取り上げてもらうのがいいんですけど、そういう(敗戦の責任を背負う)役割も必要な年齢、立場になってきた。例えば自分が打てなかった試合で負けたとしたら、それをどう受け止めるかは主力として大事。勝敗の責任は僕ら主力が背負うべきものだと思っています」と〝戦犯〟を引き受ける覚悟で戦っている。

 ギータの背中が、日に日に大きくなっている。