目指すは「ジャイアント朗希」か。ロッテのドラフト1位ルーキー・佐々木朗希投手(18=大船渡)ら新人7選手が、8日にさいたま市内のマリーンズ寮に入寮、プロでの新生活のスタートを切った。人生初めての寮生活に期待と不安が半々といった様子の“令和の怪物”だったが、周囲は最速163キロの球速だけでなく、もう一つの成長にも熱視線を注いでいる。

 午後2時過ぎ、新人7選手の大トリで到着した佐々木朗は田村寮長ら球団職員とガッチリ握手。自身の名前が入った在室プレートを受け取ると、集まった報道陣からは無数のフラッシュが飛び交った。

 プロ入りを機に初めて親元を離れた佐々木朗は「1人暮らしも寮生活も初めて。不安な気持ちや寂しさと、野球を思う存分できる楽しみな気持ちが半々です。今日は大船渡からここまで来るのが早かった」と惜別の表情。この日の朝には野球部のチームメートから寄せ書き入りのユニホームをサプライズでプレゼントされたといい、後ろ髪を引かれる思いで生まれ故郷の大船渡を後にした。

 入寮に際しては井口監督の著書「変わろう。」と「プロが教える筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典」という2冊の本を持ち込み「夏が終わってから買いました。今まではあまり読めてなかった。筋肉の名称を覚えれば、この先トレーナーとのやりとりもスムーズにいくと思うので」と意図を説明。この日、近隣の戸田で新人合同自主トレを行ったヤクルトのドラフト1位・奥川恭伸投手(18=星稜)が「寮が近いので一緒に食事に行きたい」と話していたことを知らされると「(奥川を)自分から誘って断られなければいいかなと思います」と話し、報道陣の笑いを誘った。

 いよいよプロでの新生活が始まるが、ちょっとした問題もあった。睡眠へのこだわりが強い上に190センチの体格も相まって、なかなか寝具が決まらず入寮までにベッドの運び入れが間に合わなかった。田村寮長は「ピッチャーはいろいろとバランスのこともあるので、各自好みのマットレスを持ち込むことが多い。ベッドは欲しいと言ってるし、近日中に買いに行きます。何せ体が大きいんで、そのあたりも聞いてみて」と説明するなど、まずは体格に見合った寝具探しがプロでのスタートとなりそうだ。一般的なベッドの丈195センチは、身長180センチ以下の日本人向けのもの。すでに190センチの佐々木朗はロングサイズのものを特注しなければならないが、今なお成長途中と言われるその長身は、果たして何センチまで伸びるのか。筑波大で監督を務める傍ら野球の動作力学を専門に研究、U18代表合宿前には佐々木朗の直接指導も行った川村卓准教授は「男子の場合はヒゲが一つのバロメーター。濃く太いヒゲが生えてくればそれ以上身長が伸びることはあまりない。高身長の人は一般的に成長が遅く、佐々木くんくらいの体格であれば22~23歳くらいまでは成長する余地がある」と語る。

「2メートル超えはさすがに考えづらい」というものの、もう数センチならば伸びる下地は十分あるという。過去の日本人野球選手で最も背が高いと言われるジャイアント馬場さん(元巨人・馬場正平)の選手時代の203センチはともかく、阪神・藤浪(197センチ)に届くほどの成長を遂げる可能性がある。

 もっとも身長が伸びることで体のバランスを崩すこともままあり、一概に高身長がいいとも言い切れないが、長身と長い腕から繰り出すボール、打者に与える視覚的なプレッシャーが効果的なことは過去の先人たちが実証済み。何より日本人からランディ・ジョンソン(208センチ)のようなメジャーリーガーに迫る体格の選手が生まれること自体、ロマンがある。日本球界最速だけでなく、現役日本最高身長の期待も背負う“令和の怪物”。夢へのゆっくりと大きな歩みを、まずは浦和の地から踏み出す。