【赤ペン! 赤坂英一】年俸5億円の単年契約を結んだヤクルト・山田哲は今季、国内FA権を取得する見込みだ。そこで早くも、今オフの動向が他球団編成担当の間で注目の的になっている。

 トリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)3度の山田哲なら、ポスティングシステムを使うか、海外FA権取得を待ってメジャーリーグに行くのではないか。と思ったら、某球団の編成担当者が「それは将来的な話。今オフの移籍先は国内の可能性が高い」と、こう耳打ちしてくれた。

「今オフ、山田哲がFAで移籍するとしたら巨人でしょう。二遊間コンビを組むショートの坂本勇とは侍ジャパンで一緒にプレーしていて、とても仲がいい。それに巨人では、ちょうどセカンドが穴になっていますから」

 そう言われれば、昨年の今ごろ、正二塁手と期待されていた吉川尚は腰を痛めてシーズン途中に戦線離脱。昨秋の宮崎キャンプも参加できず、外野にコンバートされることになっている。二塁での守備は腰への負担が大きいため、俊足と守備範囲の広さを生かそうと考えての配置転換だ。

 表向き、今季の巨人はセカンドが定位置争いで一番の激戦区と言われている。が、第2次原政権下の2014年には正二塁手候補の寺内が、FA移籍してきた片岡(現二軍内野守備走塁コーチ)に定位置を奪われたケースもあった。巨人が今オフ、同じような補強を想定していたとしても不思議はない。

 こうした観測の背景には、ここ数年、日本人内野手がメジャーで成功していないこともある。日本人でメジャーに挑戦した内野手は過去8人で現在はゼロ。特に最近は、一度もメジャーに上がれなかった現巨人・中島をはじめ、元ソフトバンク・川崎、元日本ハム・田中賢、元阪神・西岡など、ほとんど活躍できず日本に帰ってきた選手ばかり。

 当然ながら、メジャーでも日本人内野手の評価は芳しくない。ポスティングでの移籍を目指した広島・菊池涼も結局は断念せざるを得ず、昨年末に広島残留を決めた。一方、巨人・坂本勇は「自分には無理やと思うので」とメジャー挑戦を封印し、巨人と5年契約を締結。最初の3年だけで15億円という報酬を取った。

 もし、山田哲が国内移籍を選択すれば、今後はやみくもにメジャーに挑むのではなく、現実的な将来設計を選ぶ選手が増えるかもしれない。 

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。毎週金曜朝8時、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」(講談社)などノンフィクション増補改訂版が電子書籍で発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」(PHP文庫)など。最新刊は構成を務めた達川光男氏の著書「広島力」(講談社)。日本文藝家協会会員。